第10話
ミトさんと視線が交差する。
ああ、答えが出されるんだ。
「誰でもいいことはないよ。私が欲しかったのはヒーラーだからね」
あれ? この感じは想定よりいいの――
「まあでも、レボル君じゃなきゃダメなこともないけどね」
分かってたことだけど、ことだけど!
ミトさんならそういうことは言わないタイプかもしれないというのは高い理想だった。
現実を受け入れなきゃダメだよね。
「僕で良かったと言ってもらえるよう精進します……」
結局あの場所に他に優秀なヒーラーがいたら、そっちを選んでたんだろうなと考えたら運が良かった。
「そんな悲しい顔しなくても大丈夫だよ。今から捨てるなんてことはしないから」
たしかにサーシャさんが言ってたこれまでのパートナーとの経緯も、相手側が折れるか狩りに出られなくなるかのどちらかだった。
つまりは僕が死ななければ、この職を失うことは無い、はず。
初心者だってことは分かってたわけだし。
「拾った責任は取るからさ。だからといって、特訓をサボっていいわけじゃないからね。レボル君は私と一緒じゃないといろいろと厳しいみたいだし、必死についてこれるよう頑張って」
え? それって……。
「なにか知っているんですか、僕のこと」
「知ってるよ。レボル君が他の初心者グループからお断りされるくらい魔法が使えないから、私がパートナー契約を解消したらギルドからもお断りされちゃうこととか――」
「ちょ、ちょっと待ってください! 僕、この1週間でそんな危険な立ち位置になってるんですか⁉」
サーシャさんと毎日話しててそんな雰囲気一切感じなかったのに!いや、むしろ感じさせないようにしてくれたのかな。
ああでも、魔力って生まれ持った特質だし、努力でどうにかなるのは基本的に魔法の習得や知識、体力面の話だし……。
「まあまあそんなあわあわしなくてもレボル君がついてきてくれればそれでいいんだから!」
「あ、あはは……」
そんな晴れやかな笑顔で言われても困りますよ。
「傷治してくれてありがとね。じゃ、ギルドに戻ろっか」
僕が木につけておいた目印を頼りに歩き始めたミトさんの後ろをトボトボとついていこうとした。
そのとき、ポンと手を叩いたミトさんが振り返る。
「そうだ、忘れてた!」
「なんですか?」
「昨日レボル君が言ってた一人暮らしだけどさ」
話が急に変わった。
とはいっても昨日、今後のことを考えて一人暮らしを始められるように貯金をしたいと相談したから不思議という程ではない。
「私の家で一緒に住む?」
ただその提案はあまりに突飛なものだった。
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