第7話 【過去編】シモンの休日
『クイーンゲーム』
それは、トランプで勝ったものが相手に命令できると言う、ポーカーと王様ゲームを組み合わせた、シモンが考案したイカれたゲームである。
「シモン、今日こそは負けないからな」
「シンシア、戦闘でも、賭け事でもお前が俺に勝つことなどない。俺と戦った時点で、メスブタ確定だよ」
「はっ、言ってろ」
私は、シンシアは今日こそ勝つのだ。
勝って、コイツをビッチから卒業させてみせる!
「私が勝ったらギルドを辞めろ、そして私の故郷でこき使ってやる」
「かまわないよ、お前に負けることなどない」
「いつまでも、勝てるなどと思うなよ?」
そう、今日の私には秘策がある。
いや、助っ人と言うべきか。
「シモン様、シンシア様。カードをお配りします」
今日は普段の二人だけのポーカーとは違う。
ディーラー役を入れることにしたのだ。
シモンの副官である『クリス』。
金髪で赤い瞳を持つ彼女はギルドに置けるシモンの監視役だ。
幹部ながら下半身が暴れすぎるシモンを抑えるため、ギルドマスターから監視を任命された彼女は、私と同じくシモンの性事情に呆れ果てている。
彼女だって、こんな役目は嫌だろう。
私は彼女に対する親切心から提案を持ちかけた。
『一緒にシモンを痛い目に合わせないか?』
手はずはこうだ。
毎月開催されるポーカー勝負にディーラーとしてクリスを参加させる。
そして、クリスが頑張って私が勝つようイカサマをする。
私が勝つ。シモンは私の言う事を聞き、ギルドを辞めて私の田舎で暮らす。ビッチも、辞めてもらう。
クリスはシモンの監視役をやめれてハッピー。
私はシモンというビッチで煩うこともなくなりハッピー。
みんなハッピーだ。
まあ、シモンは少しだけ可哀想だから、土下座するなら私が直々に結婚してやっても良い。
うん、うふふ。それでみんなハッピーだな!
「ぅふ、ウフフ、うふふふふ」
……やっと、夢が叶うのか。
こんなに晴れやかな気持ちは、久しぶり。
シモンの金で飯もいったろ!うふふ!
◇
「シモン様、馬鹿からこのような提案を持ちかけられましたが」
「おっ、了解。じゃあ馬鹿がギリギリ負けるくらいに適当にやっといて」
「はっ、承知しました」
◇
「良かったぞメスブタ」
「だ、だれが♡メスブタだぁ……♡」
「シンシア様、契約を交わした以上メスブタとしてキチンと奉仕すべきでは?。ディーラーとして不履行は見過ごせません」
「やかましい!肝心なところでミスりやがってぇ……!……ていうか、お前は帰れよ!恥ずかしいんだよ!シモン!大人しく抱かれてやるからソイツ帰らせろ!」
「シンシア様、先ほども言いましたがワタシはディーラー。取り決めが守られているか確認できるまで、ここで見させてもらいますよ」
「かっーーー!!!だってよ!シンシア!仕方ない!これはお前のメスブタ魂見せつけないとな!な!」
ぐぬぬ!
そんな効果音が出そうなほど、シンシアは歯を食いしばる。
だが、この場に仲間が居ないことを悟った彼女は下を向く。
拗ねるように頬を膨らませたかと思えば、口に溜まった体液をクチュクチュとまとめ、床に吐き出した。
「ぺっ!」
彼女は、そのまま両手で顔を隠し天を仰ぐ。
パン!
顔を隠していた彼女は、そのまま手を少しだけ浮かせ気合を入れるように自分の顔面を大きく叩いた。
「シンシア♡24歳♡シモン様のメスブタだぶぅ♡いっっっぱい♡おかしてぶぅ♡」
「シモン様、やはり彼女は凄いですね」
「ああ、契約とか取引で縛っちまえばなんでもするぜ」
「ぶぅ♡やさしくしてぶぅ♡メスブタになればもういいんだろぶう、クリスは帰れ、ぶう♡」
◇
「メスブタ、気持ちよかったろ」
「……ぶ、ぶひい~♡♡♡」
舌を上に突き出したまま、シンシアは失神した。
◇
「シモン様、お掃除いたします」
行為が終わると、見守っていたクリスが近寄ってくる。
倒れたシンシアをずらすように足蹴にすると、体液で汚れた地面に膝をつく。
その所作は、まるで騎士、あるいは執事のように忠誠心が感じられた。
「こちらへ……」
怜悧な印象を見せる彼女は、その小さな口をんべっと大きく開けた。
彼女が副官についてから、始まった慣習。
全身お掃除。
俺が命じたわけでもないのに彼女は一際これを好んだ。
(ちきしょう、良い女。抱きてぇなぁ)
クリス。俺の副官。
彼女の性的価値観は、狂っているのかもしれない。
汚いところ含め、全身を舐めるという。
あのシンシアですら中々やらないことをしておいて、俺がクリスを抱こうとしたら彼女は断固として断った。
『わ、ワタシにそのような価値はありません!ティッシュのようにお使いください!』
自己評価が低い子なのかな、と思えば裏でシンシアを馬鹿と呼ぶ強かさも兼ね備えている。
家出した、という彼女をギルドに入れたのは俺。
彼女はあまり頭も良くなかったから勉強も教えた。
とはいえ、流石にこの忠誠心は謎だった。
それだけでこんな子になるかね。
あるいは、性的嗜好。
舐め舐めフェチ、なのかもしれない。
確か彼女は6年ほど前に14で入団し、今では20歳付近だったはず。
うら若く、美人な彼女にこんなことをされて嫌な気持ちなどないからいいのだが。
でも、できれば抱きてぇなぁ。
「はぁ……。シモン様、お待たせしました。お掃除完了いたしました」
「いつもありがとう、クリス」
お陰で性生活がいっそう充実した。
彼女のサラサラとした金髪を梳くように撫でる。
「ふあぁ……」
普段冷静な彼女が見せる、蕩け顔。
目はトロンと垂れ下がり、口をポカンとあける。
ちゅっ。
そんな無防備な唇にキスをした。
「……?!……?!し、シモン様、ダメです、汚いです!」
「なんで?」
「まだ口を洗っておりませんから!不潔ですよ!」
「なんだよ、クリスは前に『俺の身体は汚くないから舐められる』なんて言ってたじゃないか、ウソだったのか?」
「い、いえ、そのようなことはありません!シモン様は神聖です!汚いところなんてありません!」
「じゃあキスしても問題ないだろうが」
ぬぐぐ。
クリスはそんな表情で固まった。
「というか、前から疑問だったんだが、どうしてここまでしてくれるんだ?」
「シモン様には返しきれぬほどの恩がありますから、……ワタシの一生を貴方に捧げたいんです」
「別に、家出したお前を拾って勉強教えたくらいだろ?そんなのいっぱいいるけどさ、お前レベルはそんなにいないぞ」
他にいない、とは言わないが。
「それだけ、ではありませんよ。シモン様には命を助けていただきました。……それに」
「愚かで、腹黒で、最低の、妹からなぐられそうになったときにも助けていただきましたから♡」
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