@ku-ro-usagi

「仕事中におならしたくなってね。

席立つの面倒で、その場ですかしっぺを試したの。

でもね、

ポ……!ポポポ!ポポポ!ポポポ……!

って尻の肉と椅子の座面の合わせ技でね、高音が変に響いてしまって。

室内はしばしの沈黙の後。

私はね、

『あはは、すみませ~ん!』

って笑って誤魔化そうとしたの。

なのに、斜め後ろの席の後輩君が、

『……今、ここの通路を、霊が通りすぎて行きました』

って真顔の低音で頭のネジ2、3本外れたこと言い出してさ。

私はまたそれを笑おうとしたのよ。

でも、

『……ヤバいな?』

って上司たちまで深刻な顔して仕事の手を止めてるの。

『こんな白昼堂々に現れるなんて、相当強力な悪霊では?』

『取り憑かれるのも時間の問題かもしれない』

ねぇ、うちの会社はバカしかいないの!?

そしたら、その話があれよあれよと広まって、他の部署からも出るわ出るわの霊の目撃情報。

そう。

なんとね、うちの会社、バカしかいなかったのよ。

3週間後には随分物々しい大仰な霊媒師まで派遣されて、会社全体をお祓いする大事になってた。

それから?

うん、会社の業績が上がったわ。

なんなのかしらね、うちの会社」


「エッチの時にね、

『お前はセクシー女優なの!?』

ってくらい激しく喘がれてさ。

こっちはタイミング悪くお腹にガスが溜まってて、真っ最中に結構な爆音のおならが出ちゃったんだけど、

『アアーッ!アーッ!アーンッ!!』

って彼氏の喘ぎ声で全部掻き消されたの。

いや良かったし助かったんだけどさ、事後に、

『恥ずかしがらずに、もっと声出していいんだよ?』

って言われた瞬間、物凄く腹が立って彼の頬をひっぱたいてそれっきり。

あぁ、あんまりおなら関係ないね?

え、ある?あら、みんな優しいわね」


「社会人で初めて一人暮らししたの。

普通のアパートの2階。

友達も呼ばず彼氏もいないし静かに暮らしてたつもりたんだけど、大家さん通して下の人から苦情来たの。

下の階の人は夜勤の人だったんだけど、

『上の人のおならの音がうるさくて眠れない』

って。

確かに私は平日休みで遅番の日は午前中も部屋にいたよ。

実家と違って一人だから、おなら解放宣言と言わんばかりにもう毎日お祭り騒ぎでおなら出してたし、You○ubeでガス抜きポーズとか観て日々おならを放ったりはしていた。

正直どれだけの音を出せるかって試していた節も多少あったことは認める。

でもそれら全部のタイミングが上下で合わなかったのね。

『下の人は長年住んでくれていて、うちには大事な店子さんなのでね~』

って、たった3ヶ月でアパートから追い出された。

さすがにショックだったし、新しい引っ越し先の保証人になる父親には、

『屁が原因で部屋から追い出されるとは情けない』

って呆れられるし、でも仕方ないじゃないね?

今は防音が売りのマンションに押し込まれて毎日気兼ねなくおならしてるわ」


「私はね、旦那が夜中に寝室からちょくちょく消えるから、

『浮気相手にでも連絡してんのか』

と思って問い詰めたら、

『お前に屁こかれると臭くて寝てられないんだ』

って告白されたよ。

空気清浄機置いたら戻ってくる時間が短縮したけど、別室になるのは時間の問題な気がしてる。

だって、どれだけ臭いのかって聞いたら、

『腐ったゆで卵500個位ぶつけられた感じ』

『鼻がもげそう、いっそ鼻をもぎ取りたい。肥溜めに首だけ出して浮かばされてる拷問気分』

だって。

納得行かないのが、私は野菜大好きで肉なんかこれっぽっちしか食べないのに毒ガスって呼ばれることよ。

なんでだと思う?才能?」


「彼氏とね、川へ遊びに行ったの。

静かな清流で鳥の囀ずりとか聞こえて来て、とてもいい所だった。

2人ではしゃいでたんだけど、動いたせいかおならしたくなっちゃったの。

迷ったけど、川の中なら流れもあるし大丈夫だろと思って浅瀬でね、しゃがんだ勢いで思いっきり発破したのよ。

そしたら背後で大きな気泡と共に、小魚4~5匹がお腹を上にしてぷかぷかーって浮き上がってきたの。

これでもかなり控え目にしたつもりだったんだけど、小さな生き物達にとっては相当な衝撃波だったみたいで。

小魚たちは気絶して私の周りをプカプカ浮いてるし、彼氏はひたすら困惑した顔で、

『え?え?』

って浮き上がる小魚と私の顔を交互に見てくるしで、

私は小魚を両手で掬って見せながら、

『た、大漁♪』

って誤魔化してみたけど駄目だった、フラれたわ」


「本日は『屁』とか言うテーマなのに来てくれてありがとね。

何か思ったよりみんな濃くて、一番ラストの私が霞んでしまう。

うん、さっさと済ませるわね。

私は一人暮らししてる部屋で、スマホ観ながら、

『あはっ!』

って笑ったらその勢いでオナラが、

『ブゥーッ!!』

って出たの。

そしたら、

おじさんの凄い困惑した、

『え……っ?』

って声が聞こえたの。

(「え……?」って、え、誰?)

その声がね、作り付けのクローゼットからだったの。

立ち上がってバッと開いたら、中に大家さんがいた。

久しぶりに若い女の子が入居したから、興味本位で部屋を漁ってたら、私が帰ってきちゃって困ってクローゼットに隠れてたんだって。

隙間から覗いてたら私が笑った勢いで凄いオナラするから驚いて声出ちゃって。

これ、私がおならしてなけりゃどうなってたの?

大家の奥さんにはどうか穏便にとか言われたけど断ったよ。

いや、だって頭おかしいでしょ。

口振りからして初犯じゃなさそうだし。

そしたら引っ越し先にまで、しばらく、

『屁女』

『屁こき女』

って書いた紙をポストに入れられたりドアに貼り紙までされた。

『部屋ですら自由に屁すらこけないって何なの?』

って腹立って皆に召集掛けたんだけど、みんなの屁話で救われたわ、ありがとう」










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

@ku-ro-usagi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ