謎の飛来物あらわる、唐突に魔物もあらわる
イドルさんがこの星にやってきてからおよそ1週間後の午前中、空に謎の飛来物が現れた。
すでに王都に帰っていた俺達は、ウルティメイト邸のバルコニーからその様子を覗き見ることになった。
「どうやらアレは、向こうの人類が作った人工物みたいだね……素材はおそらく、魔術で作った耐熱素材かな」
望遠鏡越しに飛来物を見たプルサ師匠が冷静に状況を分析する。
現在、イドルさんがリンガ導師の策略でこの星に来てしまったことは、1級冒険者の間では事実として共有されている。
しかし、民衆はそのことをほとんど知らない。
1級冒険者のクァガミがオルドアークス家配下のメディアに対しそのことを秘匿するよう命令したからである。
「なんだなんだ……?」
「あの飛来物は何なのよ!!」
すでに外では謎の飛来物に困惑する声が立ち始めている。
ズドオオオオオン……!
その時であった。
首都近郊南部に突如として大型の1級魔物『スライムイーターイーター』が現れたのは。
『グヌォオオオオオオオオオオオンッ!』
スライムイーターを二足歩行にした後巨大化させたような見た目のそれは、街に向かって大音量の咆哮を上げた。
全長は憶測でも12メトール近くあり、バルコニーからでもその姿を見ることができた。
「タイミングが悪いね……ここは改新世界で周囲の被害を抑えられるワタシに任せて……!2人は飛来物の対応を……頼んだよ!」
師匠がすぐさま影の鎧と翼をまとい、スライムイーターイーターへと駆けていく。
スライムイーターイーターはスライムイーターのみならず、動物ですら食べる肉食魔物であり、放置すれば死者がでかねない。
俺は師匠のとっさの判断に心の中で感心しつつ、飛来物に対応すべくナーシェンと共にひとまずギルドセンターへと駆けていった。
「おいゼロッタたち!オマエは西部10キロ先に現れたノーズドラゴンの大群の対処を!クァガミとその仲間たちはひとまず待機していろ!」
ギルドに入ると、受付員さんが大声で一級冒険者たちに指示を出していた。
ギルドから瞬く間にゼロッタさんとその仲間と思われる方々が立ち去り、クァガミさんと思われる貴族のような男性他数名がその場に残った。
「んで、空に現れた飛来物の対処は……おい!そこの仲良し2人組!オマエらが例の飛来物をどうにかしろっ!」
「ボ、ボクたちですね!」
「ああそうだ!ゼロッタいわく自力で飛べるナーシェンとオールラウンダーなヨウロ!王国領土南西部に落ちそうな飛来物を追え!」
「わかりました!」
「了解!」
俺たちは受付員さんの指示を受け、ギルドセンターを飛び出し駆け抜けていった。
◆◇◆◇◆
「さてクァガミ……オマエにはギルド長によるスペシャルな任務がある!」
そう言うとアーラメはクァガミに赤い依頼書を見せた。
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【ギルド勅命依頼】
依頼名:突発的な魔物出現の元凶を捕らえよ
依頼主:ギルドセンター長
報酬:チーム全体で1,500,000サキン
概要:
ジュノー家当主の密告により、ここ最近頻発している魔物が突然発生する現象の元凶が判明した。
どうやら、王都に住む貴族であるジュノー家に属するソクゼンという少年がスキルで魔物を出していたらしい。
現在、彼の現在位置は魔道具『サーチマップ』にて確認可能な状態になっている。
彼を現行犯で捕縛せよ。
受託条件:この書類を受け取った1級冒険者およびその仲間であること。
備考:この依頼を承諾した者に、ソクゼンの位置がわかるサーチマップを差し渡す。
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「おそらくソクゼンは現在進行形で魔物をどんどん出している……現行犯にするなら今がベストタイミングだ」
「……わかりました。この私めがソクゼン・ジュノーを……現行犯捕縛してみせましょう」
クァガミは少し苦しそうな声で依頼を了承した。
彼は高貴な家同士の付き合いでソクゼンのことを知っていた。
年功序列制が強いジュノー家において、当主の次男だったソクゼンは生まれながらにして後継の道は閉ざされていた。
そして、その苦しみをたびたびクァガミに打ち明けていたのだ。
「……待ってろよな、ソクゼン」
サーチマップを受け取ったクァガミは静かに決意を固め、同じ家に属する仲間数名を引き連れギルドを出た。
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