ヨウロ&ナーシェンVS最強の生物ホムンクルス(暴走中)
「輝き、貫き、導け光ぃー!」
ヴァジャアアアアアアアアアッ!!
早速、ナーシェンのランタンを介した極太光線が謎の魔物を貫く。
『ゴメン……ゴメン……!カラダ、再生シチャウ!!』
ジュボボボボボ……
しかし、魔物の身体は謝罪のテレパシーと共に穴を埋めるように再生していき、穴が開いた表皮は以前よりも堅そうな状態で完治してしまった。
『僕ノ身体……スッゴク強イ……!モシ無理ダッタラ……逃ゲテ!!』
「ナーシェン……どうする?俺は正直、アルクさんに救援を要請した方がいいと思う」
「じゃあ、アレを試して効かなかったら……ひとまず撤退しましょう!」
俺たちは数日前からオワリス王国東部にて魔物討伐の依頼を受けている。
東部は西部と違って1人しか一級冒険者がいないぶん、人材不足が深刻であった。
そのため、ギルドとアルクさんの勧めでしばらく東部に滞在することになったのだ。
「誰かに灯され、置かれた灯~、暖かな家で、確かに燃え盛る~」
「にしても、コイツはいったい何の魔物なんだ……?まさか、フライドラゴンを追ってきたキンキランドの魔物とかじゃないよな」
俺は約90秒の詠唱を始めたナーシェンに攻撃がいかないように囮になりつつ、謎の魔物の正体に想いを馳せる。
ジャバッ!ジャバッ!ジャバッ!
『ウグッ……ウグァッ……』
オート発動で何度も発射されるシャチ型魔法弾。
魔物の皮膚を食い破るにはあまりにも力不足だが、確実に魔物の気を引いている。
グオオオオォオォオォ……オンッ!
「魔物の全長が……伸びただと?!」
ナーシェンの詠唱開始から1分経とうとしたとき、これまでスライムのような形状だった魔物が今度は短いヘビのようになった。
『ゴメン……ナサイ!僕ノ身体……!僕ノスキル……!言ウコト効カナイ!効カナイ!助ケテ……!ゴメンナサイ……』
中から謝罪を伝えるテレパシーが聞こえてくる。
ジュバッ!ジュバッ!ジュバッ!
「要するに……スキルが暴走して、この魔物になってしまったわけだな」
俺のスキルたちが魔物の機動力上昇に伴い、緑和布による拘束などの機動力を削ぐ足止めも行い始める。
「さあ行こう~未来は明るい!」
ついに、ナーシェンの詠唱が終わりを迎える。
「改新世界、
周囲の世界が、作り替わっていく。
気づけばそこには舞台と観客席があって、ナーシェンも俺も、魔物ですら部隊の上に立っていた。
そして、観客席には頭部がランタンになっている人型の存在が大量におり、松明を振り回して応援していた。
「やりました!成功です!」
これまで、一度も成功したことのなかったナーシェンの改新世界が、今この時をもって初めて成功した。
「これで周囲の被害を気にせず技打ち放題ですね……早速ですが、いきます!」
改新世界内に、
バリッ!バリバリバリバリッ!バリバリッ!バリバリ!バッババリ!!
そして、舞台全体に猛烈な雷電が走る。
俺はオート発動した藍湧水でそれをすべて防ぎ、魔物へと目を向ける。
魔物全身各所に、雷撃で生まれたであろう傷跡があった。
確実に効いている。
『アッガガッ!ソノ火力ナラ……イケルネ!弱点……示スヨ!』
魔物の全身に大量の矢印が浮かび上がる。
全ての矢印はたどっていくと最終的に額っぽい場所に行きついている。
「さあ!みんな、盛り上がっていこっ!」
『『『ウォー!ウォウォーー!ウォーウォー!ウォー!貫き助け出せェーーーーーー!!』』』
ヴァジャアアアアアアアアアアアーーーッ!!
ランタン頭の観客たちが一斉に詠唱を行い、各々の頭部から魔物の額に向けて光のビームを放った。
直撃した額の表皮は無くなり、弱点であろう青い岩のようなものが露呈した。
『青い塊の中ニ……僕はいル……!』
先ほどよりも鮮明になったテレパシーが、親切に自分がいる位置を伝える。
「よし……あとちょっとだ!行くぞ、
俺は最後の仕上げとして、青い塊内部の状況を知るべく、オート化した青鯱魂に問いかけた。
『アタシは視たぜ!あの中に額に魔道具を付けた人間らしき存在が1人いる!そしておそらく、額にある魔道具を壊せばすべて解決する……!』
まだ青鯱魂の自意識が確立しているかどうかわからない中、問いかけた声に応じる声。
黄や緑に続き、ついに青も人格に目覚めたのだ。
「中の額の魔道具だけ壊す……ってのはいけるか⁉」
『もちろんだ!藍の協力でより遠くまで泳ぎ、賢く的確にかみ砕いてやる!』
スキルと会話している間も、魔物の身体は中の人の意識に反し大きくなっており、2足歩行の爬虫類のような姿へと変化しつつある。
『「藍+青、藍青併用、
俺と青鯱魂が共に詠唱を行い、いつもより多量のシャチ型魔法弾が純水を帯びてはるか高みにいる青い岩へ突入する。
『額の魔道具、かみ砕くぞぉーー!!』
その声と共に岩の内部から何かが砕ける音が何度も鳴り、やがて魔物が動かなくなった。
そして、魔物も青い岩も砕け散り、中から金髪で袖の無い服を着た少年が出てきた。
『僕はこの土地の言葉が話せないから、この気持ちはテレパシーで伝えるね。2人とも……助けてくれて、ありがとう』
少年はその場に座り込み、角を生やしてからテレパシー越しにお礼を述べた。
その顔は、少し儚げに笑っていた。
この出会いが歴史的に意義のある出来事であることを、この時の僕たちはまだ知らなかった。
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