破壊神降臨編

破壊神(温厚)降臨

すごいです!ついに青鯱魂までオート化できるなんて!」


「褒めてくれてありがとう。ナーシェンこそ、2級冒険者とは思えない火力が出ていて感心するよ」


 ケーシーを逮捕してから一週間後、俺たちは産卵のために俺たちが済む惑星に帰ってきた一級魔物フライドラゴンを倒していた。




フライドラゴンは惑星トウガイアで生まれ、生後数年でここよりも広い惑星キンキランドへと渡航する。


 そして、キンキランドでパートナーを見つけると再びトウガイアに帰るという壮大な生態を持っているのだ。


「にしても、コイツらがいたキンキランドってどんな星なんだろうな……」


 俺たち人類はキンキランドが故郷だとされている。


 この星にいる人類は、今から3000年前に破壊神から逃げるためにキンキランドから移住してきた人々の子孫なのだ。


「きっと色んな人や動物、植物や魔物が盛りだくさんだと思います!」


「そうだな……夢があるなぁ」


 師匠いわく、向こうの惑星にも人類がまだいるらしく人工の明かりが確認されているそうだ。


「……さてと、依頼通り10匹倒せたし、帰ろうかな」


 俺たちはフライドラゴンのドロップアイテムである尻尾を持ち、帰路についた。




◆◇◆◇◆




「破壊神の骨!遺跡の装置が産み出した膨大な魔力!オレの術式!必要なもの全部揃ったぜ!」


 その頃、イキテーク・オレラではメイオーンとリンガが破壊神召喚の準備を終えていた。


「対象の体細胞さえあれば、相手を目の前に召喚できるスキル……いいね、いいねぇ」


 メイオーンの作戦は極めてシンプル。


 かつて、この惑星に移住した英雄が持ちこんだ破壊神の骨と自分のスキル、そして膨大な魔力を使って破壊神をその場に召喚することであった。


「にしても、信じがたいな!今まで途切れていた破壊神の生体反応がキンキランドで20年前に復活するなんてな!」


「破壊神は魔道具と魔力さえあれば作ることができるらしいからねぇ。たぶん、3000年前のとは別個体かもしれないけど」


「にしても、破壊神はどんな人間離れした、姿をしているんだろうか!4本腕?四つ目?腹に口?気になるぜ!」


「破壊神の生物学的名称はホムンクルス……身体を自由自在に変形できる究極の生物!」


「もう我慢できねえ!破壊の権化、召喚するぜ!!」


 バシイィーーーン!!


 メイオーンがリンガの指示を待たず、自らのスキル『ゲノムサモン』を発動させる。


「あ、ちょ……まあ、いっか」


 二人がいる『神去かむさりの間』に膨大な魔力が走り、スキルが実行される。


 そして、破壊神が呼び出された。




「……はぁ!?」


 そこにいたのは、破壊神の名や逸話とは似ても似つかない、平凡な一般男性の姿をした破壊神であった。


 しかも、左手の薬指には指輪が装着されていた。


 3000年以上前から、左手の薬指にした指輪は婚姻の証とされてきた。


 つまり、この破壊神には妻がいるのだ


「人違い……ではないねぇ。身体に秘めた魔力は明らかに人外のソレだし、絵画の破壊神同様に黄金の虹彩と青い目を持っている……」


「ハーロ、マイネム、イドル……」


破壊神もといホムンクルスが、口を開ける。


「しゃべっているけど、キンキランドの言葉だからか全く聞き取れない……」


『聞こえますか……今、僕はテレパシーで話しています』


 ホムンクルスはテレパシー機能を備えた角を額から生やし、2人と会話を試みる


『ワシも、テレパシーで話す。自己紹介を頼む』


 言葉が通じなかった時のために用意したマスク型テレパシー装置を介し、リンガがホムンクルスに呼び掛ける。

  

 2人は知らなかった。




『僕の名前は、イドル・イングライフ。人間とは違う種族ですが、人間のことは大好きですし、守りたいです。どうかよろしくお願いします』


 20年前、惑星キンキランドで生まれた破壊神は紆余曲折ありながらも善良に育ち、人類を破壊する気が全くなかったことに。


 

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