ガンギマリの後始末と膨大な報酬

「にしても……ウサギを媒介することで出自を分かりにくくするとはね……悪い知恵だね」


 サイケウィング討伐後、1人地下に戻った師匠が縛られたアリアドを連れて戻ってきた。


 師匠は地下でウサギを見たことを明かしつつ、ガンギマリーの製造方法を推理し始める。


「自分の身体から違法な成分を含んだ植物を生やし、それをウサギに恒常的に食わせて成分をウサギにしみ込ませる。そして、肉汁を取れば……完成って感じかな」


「うっ……その通りだしぃ……ウサギを選んだのは、主食がマリーゴールド等のキク科だったからだしぃ……」


 観念したのか、薬品の製造者である女性が製造の詳細を説明し始める。


「あーしは……ただ、人生に絶望し、苦しむ人々を……お薬の力で救いたかっただけだしぃ……ワルモノなんか……目指してないしぃ……」


「……残念だけど、キミの作ったガンギマリーは身体への害があまりにも強い。これはもう、薬というより毒だね」


「それに、こんな作り方はウサギさんが可哀そうです!」


 ナーシェンが非倫理的な製造方法を責める。


「……まあ、いいしぃ。あーしが逮捕されても、また救世主を目指す人は出てくるし。」




 こうして、ガンギマリーの製造者と使用者1名は、首都ナゴンの東にあるミロヨ監獄に引き渡されることになった。


「ありがとうございます……それと、今後はガンギマリーの使用者だった方々が襲撃するかもしれないので、お気を付けください」

 

 監獄の職員さんが俺達の身の安全を心配していたのが印象的であった。


 それから、穴の中で飼育されていたギンギンウサギたちは、ガンギマリーによって健康を害した人々の治療薬作成のために、国に引き取られた。




 事件を解決した翌日、俺達の家に厳重にカギがかけられた箱が3つ届いた。


「どうやら……報酬が来たみたいだね、付属のカギで開けてみよう」

 

 3人でそれぞれの名前が書かれた箱を開けると、そこには今まで見たことのない材質で出来た大きな貨幣が何枚も入っていた。


「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……!これってまさか……!1万サキン貨幣!」

 

「その通り……材料に希少金属であるプラチナを使うから、滅多に発行されないんだよね」


「うおお……すごい!これで一気に聖なる肥料が買える……!そうすれば、あと50万サキン稼げば……畑をすべて復活させられる!」


 数年前のあの日、ナメクジ型の1級魔物であるヴェノムスラッグが吐いた体液でダメになってしまった実家の畑。


 少し時間はかかってしまったが、どうにか復活させられそうだ。


「あ!でも……そんなに買えるほど、肥料屋さんに聖なる肥料の在庫ってあるのかなぁ……」


 ふと、ナーシェンが俺の発言に抱いた疑問を口に出す。


「ナーシェン、そういうときは、別の街の雑貨屋を訪れて肥料を買おう。オワリス中を回れば、そのくらい余裕であるはず」


 師匠がオワリス全体を書いた地図に目を向けつつ、解決策を提示する。


「にしても……キミたちはすごいね。冒険者としての日は浅いのに、もうこんなに活躍している。いい弟子と妹に恵まれたよ」




「こちらこそ、ありがとうです!」

「ありがとう、プルサ師匠」


 俺達は師匠への感謝の言葉を精一杯述べたのであった。

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