ヨウロVSガンギマリ・モンスター
『ゴオオオオオ!!!モリィ!モリィ!モリィイイイイイ!!』
穴から飛び上がって地上に出た俺を出迎えたのは、極彩色でムキムキなコウモリモドキであった。
「師匠!コイツはいったい何なのですか⁈」
「ガンギマリーの製造者を捕らえた途端に来たんだよね……もしかしたらガンギマリー愛用者だったり」
「絶対そうだ!さっきの男が言っていたガンギマリーの作用と言動が一致している!」
1日は寝なくてもよくなり、使うと同時に筋力が久しく増強する。
間違いない、この魔物もキメている。
『ゴウモリィイイイイイイイイーン!!』
そうこうしているうちにも、コウモリモドキの身体はどんどんとビルドアップしていく。
筋繊維の肥大と共に全長も高くなり、今や10メトールにまで達している。
「それは……あーしの最終兵器『サイケウィング』……毎日ガンギマリーを与えて作り上げたパワー……喰らうがいいしぃ!」
ランタンに囚われた薬物の製造者と思われる人が、強い気迫と共にコウモリモドキの詳細を明かす。
『ゴオオオオオ!!!モリィイイイイイーン!!』
ヴァザアアアアアアアアアアッ!
コウモリモドキが羽根を一振りしただけで、当たり一面に凄まじい風が吹き荒れる。
「うえっ……飛ばされそうです……!」
「ナーシェン!掴んだ!」
俺は飛ばされそうになったナーシェンを蛸鎧から生やしたタコの足でしっかりと掴み取る。
「
ブチッブチブチッ!
俺はとっさに詠唱無しに発動した泳鯱を飛ばし、サイケウィングの翼に小さな穴をいくつか開ける。
ブチッ!ブチィ!
続いて、師匠が作った影のヘビも翼に穴を空けていく。
しかし、まだヤツは空に入り浸っている。
「ヨウロ!お姉ちゃん!今から
ナーシェンが提灯に存在する三大奥義の名を口に出す。
「いいよ、足止めは私に任せて」
「いいぞ。俺はひとまず影の中に隠れてやりすごすから心置きなく放て!」
「ありがとうございます!では、思いっきりやりますね!」
「藍湧水+青鯱魂+緑和布、藍青緑併用、泳鯱種!!」
「えいっ、えいっ」
だんだんと高所に舞い上がろうとするサイケウィングを止めるべく、俺は
一方、プルサさんも先がモリのようになっている影の縄を次々と放ち、どうにか地上へ縛りつけようとする。
そして、俺と師匠の身体は次第に厚布のようになった影で覆われていく。
すべては、露光に巻き込まれないために。
「決行、最高、咆哮上げて!脚光、栄光、成功を掴み取れっ!
少し長めの歌唱という名の詠唱が終わり、巨大な提灯がサイケウィングの目の前に現れる。
『ゴッゴゴッ!ゴウモッ!ゴゴッ!』
ヴォアーーーーーーーーーッ!!
普段は夜行性で光になれておらず戸惑うサイケウィング目掛け、ランタンはすさまじい太さの光線を各方面にぶっ放す。
「うぉー……!やっぱすごいねぇ、ナーシェンの火力は……!影に覆われていなかったら、今頃ワタシたち……ケガしてたね」
影で出来た厚布の中で、プルサが少し興奮気味に安堵する。
プルサ師匠が操る影は、光を完全に遮断することができる。
そのため、全方位に高出力光線を放つ露光提灯だろうと防ぐことができるのだ。
「ヨウロ、お姉ちゃん!もう大丈夫です!」
俺達はナーシェンの合図に従い影の布から身体を出し、地に這いつくばるサイケウィングへの追撃に入る。
『ゴオオオッ!ゴオオッ!』
俺のスキルでワカメのような植物に覆われ、ナーシェンの技で地に付してもなお、もがくサイケウィング。
『ガイシ……ンッ!ゼガイィイイイイイイ!!』
「おっと……!」
その時、1体の魔物が世界が書き換えていった。
改新世界が、発動してしまった。
「魔物の癖に改新世界発動なんて……ガンギマリー、良くない薬だね」
周囲が極彩色の夜のような風景の結界に覆われていく中、師匠は影の鎧をまとい、近接戦闘の用意をする。
「師匠、改新世界でやり返さないんですか!?」
改新世界は、よりクオリティの高い改新世界で書き換えることができる。
師匠の改新世界なら、余裕でこの魔物の改新世界を書き換えられるだろう。
「ごめん、さっき使ったから……しばらくはムリかも……でも、だからこそ頑張ろう」
「わかったよお姉ちゃん!皆で攻め立てよう!」
「は、はい!」
俺達と魔物は一瞬にらみ合い、そして再びぶつかり始める。
ドゴッ!ゴンッ!ドドッ!ドゴン!
「ほらっ……ほらっ、ほらほらっ、えいっ……!」
影で出来た巨大ガントレットでコウモリモドキの身体をうがつ師匠。
ボッボボッボオッ!ボッ!
「燃えろぉおおおお~焼けろぉぉおおおおおお~」
動きながらでも音程1つ外すことなく歌い、次々と燃え盛る提灯を投げつけるナーシェン。
ザシャッ!シャアアッ!シャッ!
「オラッ!オラアッ!内臓に喰らいつけぇ!」
青鯱魂やその複合技で着実にダメージを与える俺。
そんな状況が数分ほど続いたその時、改新世界に異変が起きた。
「な、なんかちょっと温度高くなってきていませんか⁈」
「ホントだ……どうやら、この世界内で朝日が昇ろうとしているみたいだね……」
ふと横の空に目を向けると、朝日のような熱い光が顔を出そうとしている。
「私の影で多少の熱は防げるとはいえ、これ以上かけられる時間はないよ……ここで決めよう」
「ああ、そうだな……アレで、決めよう!」
己が身体に宿る5つのスキルが、それぞれ呼応している。
「
オート化の副産物で魔力の負担が減った3つのスキル名の詠唱を省略することで手短に詠唱を言い終え、俺の身体は砲台になる。
強くなっていく光は緑和布が魔力へと変換し、俺に補給する。
「喰らえええええええええええええ!!」
巨大かつ角を持ったシャチの魔法弾が、的確にサイケウィングの心臓を貫く。
『ゴウモッ、リイイイイイイイイイ!!!リイイイイッ』
断末魔が突然途切れ、発動者を失った改新世界が解除されていく。
そして、ドロップアイテムである極彩色の爪2つのみが、ヤツがいた証として残った。
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