プルサ師匠VSガンギマリなガンギマリー製造者
「うっ、こないでほしいしー!」
「ここで降伏してくれれば、……これ以上は攻撃しない。どうする?」
ヨウロがアリアドと戦っていた頃、地上ではケーシーがプルサとナーシェンによって追い詰められていた。
「こうなれば……ガンギマるしかないしー……!」
そう言いつつ、ケーシーが口中にツタを生やし、花を咲かせる。
そして、その花をかみ砕いて飲み込む。
「ガンギマってぇ……るううううううううう!!!!うりぃいいイイイイイ!!!!ガンギマリーゴールド最高ぅだあああああああああ!!」
ケーシーの身体一気にバンプアップし、顔が強烈な笑みで歪む。
ケーシーのスキル、『覚醒菊』は食すことで快楽作用と共に脳や身体を活性化させる菊『ガンギマリーゴールド』を身体から生やすことができる。
もともとは一般的な菊を生やすだけのスキルだったが、リンガアカデミアでの学習や修行を通じて、スキルの性質を調整したことで今の性能になった。
なお、ガンギマリーゴールドの成分は身体にとても悪く、相性が悪いと最悪1回の服用で死ぬ上に、中毒性まで存在する。
「これが!!!お薬の力ァ!!!!うりゃああああああああああ!!!」
身体から一気に植物のツタを生やし、暴れまわるケーシー
「燃え上がれ
ナーシェンのランタンから出た炎が一気に燃やすが、際限なくツタが生えていくる。
「これはだいぶ、キツいね……」
「プルサお姉ちゃん!どうすればいいんですか?!周囲の被害を考慮するとさっき以上の火力で火は出せないし……!」
「……よし、改新世界を使おう」
改新世界。
スキルもとい術式を極めた者のごく一部か、精神が崩壊しかけた者にしか使えない高等技術。
プルサはそれを、15歳の時に習得していた。
右手を握り、その後ろに開いた左手を添えるプルサ。
大技を行うときにする、彼女のルーティンである。
「改新世界……逆光景勝地」
その一言で、彼女の周囲が変わり始めた。
影はプルサを中心にナーシェンやケーシーを取り囲むように大地を覆い、その大地も枯れ果てたような地面へと変わっていく。
草原の代わりに枯れ果てた木々が生え、光はプルサの背後にある光る巨大な球体『
極めて強固な結界で覆った場所の現実を一時的に改変する高等技術。
プルサはそれを、危なげなく実行した。
「これで外の影響を気にせずに殴り合えるね……さあ、始めようか」
プルサが輝球の光で生まれた世界内の影をすべて使い、影の鎧を身にまとう。
いつもより使える影が多い分、鎧はかなりゴツイ輪郭を描いていた。
硬化で影ごと硬めつつ、勢いよく突進してくるプルサ。
ドゴッ!ドスッ!ドゴッ!
「ウゴッ!なんで、殴り合いなんだしー!ウルティメイト家は遠距離メインってきいたしいいいいい!!」
殴られ始めたケーシーの言う通り、ウルティメイト家は遠距離攻撃を得意とする家であった。
そして、その家の中で代々受け継がれてきた相伝スキルであるシャードーローンも、本来は遠距離攻撃向けのスキルであった。
「その通り……ついでに言うとワタシも遠距離の方が得意」
「じゃあなんで!!ステゴロを!!」
「向いてないことをしている時ってね……すっごく生きている感じがするんだよ……!」
「意味……わかんないしぃいいいいい!!!」
普通なら忌避するであろう不得意分野に危機として挑むプルサに対し、ドン引きするケーシー。
「でも……すっごく負けた気がするし……なんで……なんで!?」
ケーシーは圧倒されていた。
苦手なことを楽しもうとするプルサの人間性に。
「ふふ……もうヘトヘトだ……相手も弱ってきたし、そろそろ拘束しよう」
本来は自分自身の影だったはずの影だけを鎧から抽出し、縄のような形状にするプルサ。
ズダダダダダダ……!
「まだ捕まるわけには……いかないしいいいいいい!!」
根性を見せ、タックルを仕掛けるケーシー。
プルサは影で出来た第三第四の腕で彼女の両手を掴むことで、それに対応。
その隙に影の縄でケーシーを縛り上げ、さらに縄に硬化を使用することで脱出を困難にした。
「ナーシェン、念のため、この人をランタンに閉じ込めといて」
「わかりました!」
こうして、ケーシーは2重に拘束されることになったのであった。
「どうだったかな……改新世界の感覚、そろそろ掴めそう?」
「うーん……詠唱となる歌でしっかり定義付けとかしたら、どうにかなりそうです!」
「そっか……がんばれ」
「地下の男性も、無事確保しました!」
改新世界解除後、プルサとナーシェンが会話をしている中、穴からヨウロが這い上がってきた。
「そっか。こっちもいま、確保したとこだよ」
「じゃあ、これで解決かな」
「そうかも……しれないね」
3人が話し合う中、ケーシーがガンギマリーゴールドの副作用でしゃがれた声で、ふとこんなことを口にした。
「まだ……終わって……ないしぃ……」
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