いざ洞窟へ
「おっと、怪しい洞窟が5か所ほど見つかったみたいだね……まあ、だいたいが盗賊とかのアジトだろうけど」
「特定早っ」
俺達がコウモリモドキを倒してから1時間ほど経った後、ついにプルサ師匠が怪しい場所をいくつか特定した。
「にしても……だいぶ候補地が多いね、どうしようか」
「はい!はい!ガンギマリーを人々に売っている商人を見つけ出して、尾行するってのはどうでしょうか?」
「いい答えだねナーシェン……よし、そうしよっか」
「プルサ師匠、ヨニマル半島以外の洞窟に本拠地があるという線は」
「それはあんまりないと思う。ギンギンウサギは短時間で腐りやすい。ガンギマリーもその肉汁を使っている以上、消費期限は早いはず」
「つまり、半島内で製造しないと早々に腐ってしまうってことだな」
「そうだね。私たち御三家が使っているようなよほど高級な魔道具を使わないかぎり、現代で長距離輸送は難しいだろうし」
『スルス……スルスル』
そんなことを言いつつ岩場で座って休んでいた俺達のもとに、1匹の影でできたヘビが帰ってくる。
ヘビは、ギンギンウサギの毛を咥えていた。
「キミが入った洞窟は確か……繁茂してなかったよね」
『シュルー!シュシュー!』
「そっか、やっぱりそうなんだ。じゃあ、ほぼ確実に……そこだ」
師匠が立ち上がり、とある方角を影で出来た矢印で指す。
「……さあ、行こうか」
俺達は師匠の導きで1キロメトールほど離れた洞窟へと向かっていった。
「おお、やっぱり暗いな……そろそろ肉眼では何もわからないかも」
「じゃあ、ボクのランタンで照らします?」
「最低限の明るさで、お願い」
洞窟の入口から100メトール地点にて、ほんのりとした明かりが俺達の周囲に灯った。
「あっ、明るくなって初めて気づいたけど、けっこう人のいた痕跡があるな。地面に靴の足跡がたくさん残っているし」
「その足跡の形も数パターンある、ってことは、1人の人間が途中で靴を買い替えるほど長い期間通っていたとか!?」
「複数人がこの先に何度も通っている……というのも考えられるね」
やがて、入口から300メトール地点になった頃、ついに俺達の前に明確な人工物があらわれた。
「木製の門……尖った木で作った障壁……これはもう、何かあるだろ」
「……待って、この先で何か、人の会話が聞こえる。ちょっと陰で聞いてみよう」
俺達は門から数メトール離れた地点で、耳をそばだてはじめた。
「……ありがとうございます!これでまた、苦しい人生を乗り切ることができます!」
「……いいってことーよー。あーしは、社会が救いきれない人々を救うために、この事業をやってるよーなーもんだしー」
「……あ、あの、作りたてのガンギマリー、ここで飲んでみてもいいですか?」
「……いーよー、でも、飲みすぎると脳が壊れるかもしれないから、気を付けてーねー」
「これは、クロだね」
「露骨にクロです……!」
「ヨウロ、ナーシェン、突撃するよ。まずはワタシが門を壊すから、2人は中にいる人を生け捕りしてほしいな」
「はい」「はいっ!」
「じゃ、早速壊すね」
そう言うと、プルサ師匠の周囲にあった影が師匠のもとへと移動していき、やがて何本もの槍へと形を変えていった。
そして、門や木の障壁へ次々と衝突していき、木っ端みじんにしていった。
「うおっ?!なんだ!!」
「これは……!敵襲だし!」
売人と思われる女性と買い手と思われる男性が困惑の声を浮かべる中、俺達の強襲は始まったのであった。
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