騎士団に代わって違法ポーションを断罪せよ

「ヨウロ、ナーシェン、今日はワタシと組んで、この依頼をこなしてほしい」


 冒険者活動10日目の朝、プルサ師匠がギルドセンターの掲示板にある依頼書のような紙を俺たちに見せつつ、チームアップを提案してきた。





============================

【国家機密依頼】

依頼名:ヨニマル半島で違法ポーションを売る者を見つけ、捕らえよ


依頼主:オワリス国政府


報酬:1人あたり3,000,000サキン(追加報酬もあり)


概要:

現在、オワリス王国南部のヨニマル半島に暮らす住人の間で違法ポーション『ガンギマリー』が流行っています。

ポーションの売人を見つけ出し、捕らえて監獄へと引き渡してください。

場合によっては息の根を止めてもかまいません。

本来、この件は治安維持組織である騎士団が解決しないといけないのですが、彼らは何者かによって口封じされて動けないようです。

なお、こちらでもガンギマリーの由来を分析しのですが、残念ながらギンギンウサギの肉汁であること以外はわかりませんでした。


受託条件:この書類を受け取った1級冒険者およびその仲間であること。なお、情報漏洩を防ぐために3人以内で挑むこと。

============================



「な、なんだこれは……報酬もすごいし……」


「これはね……国家機密依頼っていう、ギルドセンターの掲示板には決して張り出せない極秘の依頼なんだよ。ワタシのもとには月1くらいで、これが届くんだ」


「依頼の内容は基本的に、導師のせいで骨抜きにされた騎士団が解決できない事件とかですね!」


「なるほど……」


「んで……どうする?いちおう拒否権はあるけど」


「ボク、お姉ちゃんの手伝いしたいです!」


「俺も……やる!」


「よし……決まりだね。さっそくヨニマル半島に向かおう」


 それから15分後、俺達は準備を整えて家を出た。




「実はね……ワタシはもう、ポーションの出どころをだいたい察しているんだ」


 俺達は師匠が自身のスキルで作った影の馬車に乗り、ヨニマル半島へと移動していた。


 そんな中、師匠が生物図鑑を見せつつ自らの見解を述べ始めた。


「これは……ギンギンウサギのことが描かれたページですよね」


「ヨウロ、生息地を見てごらん」


「生息地は、ヨニマル半島全域の繁茂した洞窟……太陽光に弱く、浴びると数日で死に至る……それとガンギマリーに、何の関係が」


「ガンギマリーの本質がギンギンウサギの肉汁であるなら、業者がガンギマリー作成のためにウサギ牧場を作っているはず……そして、その場所は」


「洞窟が有力……ってことですよね?」


「その通りだね、ナーシェン。太陽光のまったく入らない施設は作るのに手間がかかるし、怪しまれるリスクも高い……」


「だから、コスト削減が出来る上に隠し場所に最適な洞窟にある可能性が高いのか」


「ヨウロ、やっぱりキミは冴えているね。じゃあ、ちょっと調べてみるね」


 そう言うと師匠は日食を模したような杖を何度も振りかざし、スキルを使って影で出来た数十センチメトールほどのヘビを何匹も生み出した。


 ヘビは空を泳ぎ、各所に見える洞穴へと潜り込んでいった。

 

「あと100匹くらいヘビを作って調べさせれば、いい感じにわかるでしょ」


「おお……!さすがプルサ師匠!」


「ワタシは遠距離系の魔術、けっこう得意だからね……生まれながらに持っていた才能だから、正直あんまり誇りたくないけど。ところで……」


 そう言い終えると師匠は窓の外を指さした。


 そこには、ひどく興奮している1級魔物『コウモリモドキ』がいた。




 コウモリモドキは全長4メトールのコウモリに似た身体を持つ魔物で、生態もまんまコウモリなのだという。


 しかし、今は昼であるにもかかわらず、その個体は白昼堂々空を飛んでいた。。

 

「不審な魔物がいるね……キミたち2人で、倒してほしいな。いざという時はワタシが助太刀するから」


「わかった!」

「この魔物なら、30秒で片づけます!」


 俺達は馬車から速攻で降り、コウモリへと向かっていった。


「ヨウロ、『放電ほうでんオルカ』です!」

「おう!」


 ナーシェンの言う通り、俺達にはこの魔物を30秒ほどで確実に倒せる。


 なぜなら、放電鯱があるからである。


「轟雷、豪胆、豪傑の誕生~!豪勢、豪快、豪華に決まれぇえええええ!放電提灯デウス・ランタン~!」


 叫びにも似た歌が詠唱となり、巨大なランタンがあらわれ周囲に凄まじい雷撃を放つ。


 彼女がもつスキル『提灯ランタン』に存在する3つの奥義の1つ、放電提灯。


 1級冒険者でさえも、直撃すればただでは済まない電撃があたりに走り出す!


 しかし、俺はそれをオートで発動するようになった藍湧水で完全に防ぎ、追撃の準備をする。


 藍湧水で出てきた水は純粋な水で、電撃を完全に防ぐことができることを活かした、コンビネーション技。


「行けええええええ!!心臓かみ砕けええええ!!」


 俺は、藍湧水をまとったシャチ型魔法弾を放ち、電撃に苦しむコウモリモドキの心臓をかみ砕いた。

 


『ゴオオオオオ!!!モリィッ!!』


 ドサッ!!


 コウモリモドキは息絶え、ドロップアイテムである爪が2つ落ちた。




「やったです!放電鯱、実戦でも無事に成功しました!」


 ギュッ!


 喜びのあまり、俺に飛びついてきたナーシェンを抱きしめ返しつつ、俺は成功体験を噛みしめた。

 

 パチパチパチ……!


「合体技の成功、おめでとう……」


 師匠も静かに、俺達の成功を祝福してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る