これからはもっと、親孝行してやる
レーシックドラゴンを倒して以降も、俺は冒険者活動を続けた。
3日目も、4日目も、5日目も、6日目も、冒険した。
そして7日目、さすがに動きすぎだとプルサ師匠から指摘され、休みをとることになった。
「よし……!肥料、100万サキン分買えた!即座に送ろう!」
休みとはいえ、何もしないのは少しもったいなかった俺は、実家に送るための聖なる肥料を購入することにした。
なお、けっこう総量があるので、ナーシェンやプルサ師匠も運搬のために同行してくれた。
「重いです……あ、いいこと思いつきました!」
そう言うとナーシェンは10秒程度の鼻歌を詠唱代わりにし、この前の移動で使った何も入っていないランタンを作り出した。
そして、その中に自分が持っていた肥料を全て入れた。
「うう……工夫しても、けっこう重いもんだね……」
一方、プルサ師匠は重さに苦しんでいた。
師匠は、『シャドーローン』という周囲の影を借り、それを自由自在に変形させて活かすスキルを生まれつき持っている。
師匠は今、それの応用技で全身に影をまとうことで筋力を増強しており、その状態で俺の2倍ほどの量がある肥料を両手に持っていた。
「師匠、俺がかわりに持ちましょうか?」
「お姉ちゃん!ヨウロはすでに両手が肥料で塞がっているから、手が余っているボクが持つよ!」
「いいや……これでいいの。ワタシはね……こういう、自分が不得意なことをしている時間に、楽しさを見出しているから……さ」
俺達の助け舟に対し、汗だくになりながらも笑顔でそう応える師匠。
結局、俺達は師匠に肥料を持たせたまま、郵便局へと向かっていった。
「この量ですと……送料を5000サキンほど頂きますが……よろしいですよね?」
「はい、このとおり払います」
首都ナゴン郵便局にて、俺は郵便局員さんに輸送物の200分の1に相当する送料を払い、聖なる肥料をすべて引き渡した。
「にしても少年……急に仕送りの量が増えましたね……法に触れたり、導師に魂を売ったりしてませんよね?」
「安心して……この少年はワタシの教育によって立派な冒険者に生まれ変わった。今回の仕送りは、彼自身が掴み取った栄光そのもの」
プルサ師匠が俺にかけられたあらぬ疑いを払拭しようとする。
「そうでしたか……確かに、1年前より魔力保有量が増えている気がしますね。変な疑いを持ってごめんなさい」
郵便局員さんが言う通り、俺の魔力保有量はここ1年で15倍に増えた。
身体に魔力をどのくらい貯め込めるかを表すその数値は、成人で平均して10,000前後保有しているとされ、俺もかつてはそのくらいであった。
しかし、1年の修業の中で何度も魔力を使い切り、そのたびに魔力を保有する体細胞が損傷し、超再生していったことで、今では150,000にまで成長したのだ。
「では、ご利用ありがとうございました」
俺たちは郵便局員さんに見送られつつ、帰路へとついていった。
これからはもっと、親孝行してやる。
俺は決意を改め、明日からの冒険者活動に思いをはせた。
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