固まる受付員と緊急冒険者会議の招集

「……オ、オイ。なんだよそのキラキラしたクソデカい目玉。まさかあの、レーシックドラゴンのドロップアイテムじゃあねえよな……まだ2級だし……」

 

 レーシックドラゴン討伐後、俺たちはノーズリザードを更に10匹ほど倒してギルドへと帰還した。


 そして、レーシックドラゴンのドロップアイテムを渡した結果、受付員さんが固まってしまった。


「私とナーシェンちゃん、そして……ヨウロさんが倒しました。レーシックドラゴンを」


「……マジで?まあ、1級冒険者であるあなたのサポートがあれば……」


「トドメは……ヨウロさんが刺しました」

「は?」


「私は……敵の攻撃を防ぐくらいしかしてなくて……」

「はぁ?!」


 ゼロッタの証言により、受付印さんがどんどんと汗をかき始める。


「そ、そうか……そうか……これ、報酬。分配は3人に任せた」


 こうして俺たちは、報酬の76,000サキンとドロップアイテムの買い取り額である110,000サキンの計186,000サキンを受け取ることになった。


 その後、受け取った金は均等に山分けし、俺の手元に6,2000サキンが行き渡ることになった。


 なお、レーシックドラゴンのドロップアイテムだけは鑑定等に時間がかかるため、まだ買い取り額は貰っていない。


 そして、誰がその金を受け取るかについては満場一致で俺に決まった。


 俺はナーシェンと共にウルティメイト邸へと帰っていった。




◆◇◆◇◆




『おいゴラぁ!今夜19時より緊急1級冒険者会議じゃオラぁ!!ヤベえ事態が2つも起こりやがったからだ!』


 ヨウロが帰路に着いた頃、ウルティメイト邸にあるプルサの自室にて、ギルド受付員であるアーラメの声が響いた。 


「そっか。じゃあ、今夜はちゃんと生身で行くね」


 プルサが声の音源となっている自分の冒険者証を口にかざし、話に応じる。


 1級冒険者証には特殊な魔術が仕込まれており、それによってギルドの職員からの要請を受け取ったり会話を行ったりすることができるのだ。


『いつも生身で行けやオラぁ!』


「わかった。善処する。にしても……緊急会議なんて、3年ぶりだね」


『言っとくけど、今回の会議が起きた原因の半分は、実質オマエみたいなもんだからなぁ!なんだよアイツら、なんで冒険者2日目で0級倒してんだよ!』


「ふふ……すごいでしょ、ワタシの弟子と妹は」


『ああ凄いよ!アイツらはきっと冒険者の歴史塗り替えるよ!もしかしたら……オワコンと化した人類救えるかもなんて、アタシは思ってるし』


「あなたも、まだ人類に希望を持っているんだね……ワタシもだよ」




 今から80年ほど前、オワリス王国の近隣にあった小国において、民が次々と希望を失っていき、その後滅びた。


 惑星トウガイアにある国がオワリス王国にのみになった約50年前まで、その現象は続いていった。


 そして今、オワリス王国の技術は衰退していき、人々は希望を失い、社会基盤が悲鳴を上げて崩れようとしていた。


『そりゃあ、思うさ!だって……人類の衰退が、運命とか自然現象とかじゃなくて、たった1人のアホンダラによって起きたものだって知ったら!!』


「そっか。まあ、ワタシはこの衰退が導師リンガによるものじゃなかったとしても……あらがっていただろうけどね」


 プルサは全ての元凶である人物の名を挙げつつ、自らのゆるぎなさをしめす。


『困難に挑むことが大好きだなんて……いい趣味してんなぁ。んじゃ、またな!』


「ばいばい、受付員さん」


 こうして2人の通話は終わり、プルサは今夜のための衣装選びに取り掛かった。




「……ヨウロならなれるかもね。導師リンガがもたらした絶望を押しのける、人類の『象徴』に」 


 弟子の今後に期待を寄せつつ、プルサは細身の身体を魔術師の正装で着飾っていった。

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