0級魔物討伐編
2級冒険者への昇格と1級冒険者とのチームアップ
「ワリィな!オマエが昨日もらった冒険者証、今日からはもう使えねぇぞ!」
初依頼をこなした翌日、ギルドセンターに行くと昨日の受付員さんがいきなり謎の宣言をしてきた。
「えっ、なんで……」
「オマエは今日から、2級冒険者だ!よって冒険者証を新しくした!おめでとうな!今後はこっち使えよ!」
僕の手元に、銀を基調とした色合いの冒険者証が手渡された。
冒険者証は階級が変わるごとに新しくなるというが、まさか3級の冒険者証が1日で役目を終えるとは。
「あの……俺はまだ依頼は1件しかこなして無いから条件は満たしていないのでは……?」
3級から2級に上がるには一定数の依頼をこなす必要があるとされている。
確か、史上最速で2級に昇格した俺の姉弟子であるゼロッタさんでも、昇格までに20件の依頼をこなしていたらしい。
「うるせぇ!オマエのスキル保有数と実績なら問題ねえと会議で結論づけられて特例で昇格したんだよ!」
「つ、つまり、人材不足に伴う……特例ってヤツです」
突然、俺達の会話に知らない女性冒険者が乱入してくる。
彼女は薄青色の髪と白っぽい鎧を纏い、双剣を左右の腰につけており、目元は長い前髪で隠れていた。
「あっ、ゼロッタさん!お久しぶりです!」
「ゼロッタ……って確か、俺の姉弟子にあたる一級冒険者!」
修行中、俺はプルサ師匠の口から姉弟子の存在と名前を教えられていた。
彼女は、先祖代々受け継がれてきた『剣聖』というスキルを先天的に持っておらず、それを習得するべく師匠を頼ったのだという。
そして、約1年の末に剣聖の再現と習得、様々な応用技の習得に成功。
その後は、もともと持っていた防御系のスキルや剣術なども使いこなしつつ、半年で1級冒険者になったのだという。
「あっ、ナーシェンちゃん……久しぶり……ヨウロさんは……はっ、初めまして!」
「ゼロッタさん、初めまして。こちらこそよろしくお願いします」
緊張しつつも挨拶をしてくれたゼロッタさんに対し、俺も礼と共に挨拶を返す。
「あの、次の人が後ろいるから、そういう馴れ合いは、向こうでしてくれねーかな?」
「あっはい!す、すみません!!」
受付員さんの指示を受けつつ、俺たちは受付から離れていた。
「んで、本題なんですが……一緒に依頼、こなしませんか!」
ギルドの
チームアップとは、普段は別の集団で活動していたり単独行動をしている冒険者たちが特定の依頼をこなすため、一時的に臨時チームを組むことである。
「その……私、いわゆるスキルのオタクってのをやってまして……ヨウロさんのスキルを、見てみたいんですよね」
「いいじゃんチームアップ!ボクは賛成!ヨウロはどう?」
ナーシェンがキラキラした瞳でチームアップの提案に賛同する。
「じゃあ俺も、その提案に乗ろう。」
「あ、ありがとうございます!同じ師匠同士……頑張りましょう!」
こうして、1級、2級、3級の冒険者による階級の壁を大幅に超えたチームアップが成立したのであった。
「あ、あのぉ……この依頼とか、どうでしょうか?」
チームアップから数分後、ゼロッタさんがとある依頼が書かれた紙を指さした。
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依頼名:旧ナガクテン町跡地に巣食うノーズリザードの討伐
依頼主:オワリス政府
報酬:ノーズリザードの討伐数×3,000サキン+5体以上の討伐で10,000サキン
概要:
首都ナゴン東部にあった旧ナガクテン町の跡地には現在、1級魔物であるノーズリザードが住み着いています。
近くにある現ナガクテン町の安全を確保するため、繁殖期前の早急な討伐をお願いします。
受託条件:2級か1級の冒険者が2人以上いる団体
注意事項:
海岸に生息するメザメという魔物を食べたノーズリザードは脱皮し、0級魔物であるレーシックドラゴンへと進化するリスクがあります。
ナガクテン町跡地は海から離れているため、そのようなリスクは考えにくいのですが、安全第一でお願いします。
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「わ、私のスキルって、けっこう魔物に対して強いし、もう一つのも、防御向きだから……安心してください」
「1級か……よし、やろう」
俺は一瞬迷ったものの、実家の畑の再建費用を思い出し、了承した。
実家にある汚染された農地をもとに戻すためには、現代では稀少品になってしまった『聖なる肥料』を地面に撒かなければならない。
農地が汚染された原因が魔物が吐き出した魔力由来の毒であるため、魔力と反発する力である『聖力』が入った肥料を使わないといけないのだ。
数年前に父さんが出した計算によると、全農地の浄化に必要なだけの肥料を買うには約500万サキン必要なのだという。
そして現在、まだ45万サキン分の肥料しか買えておらず、取り戻せた農地は1割にも満たないことが数日前に届いた実家からの手紙でわかっている。
実家のためには、あと450万以上のサキンが必要なのだ。
たとえ実力不相応な依頼だったとしても、実家のためにやってみせる。
「んじゃっ、旧ナガクテン町跡地まで……行こうか」
これから依頼をこなすからなのか、ゼロッタさんの表情と口調が一気に凛々しいものになり、それと同時に長い前髪を頭頂部で結い始めた。
「ゼロッタさん!ボクも……頑張りますっ!」
こうして、俺たちは三者三様に気合を入れ、ギルドセンターを出ていったのであった。
この時、俺たちは知らなかった。
旧ナガクテン町跡地にて、0級魔物を討伐することになることを。
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