ギルド職員も驚く多さ
「では、個人情報の確認もできたので、次はあなたのスキルを確認します」
師匠の指導が終わったその日、俺はナーシェンと共に冒険者を管理する施設であるギルドセンターに向かい、冒険者登録を行うことにした。
なお、ナーシェンもついでに冒険者登録をするらしい。
「こちらの魔道具に、手をかざしてください」
受付員さんが古びた板状の魔道具を取り出す。
我が国は半世紀ほど前からなぜか技術が衰退し始めており、スキルを見ることができる魔道具もいまでは作成困難になっているらしい。
「さてと……」
俺は古びた魔道具を壊さぬよう、やさしく手をかざした。
『術式を、5つ感知しましタ』
魔道具から音声ガイドが流れる。
師匠曰く、半世紀以上前はスキルを『術式』と呼んでらしい。
「……5つ?いま、この魔道具5つって言っていましたよね⁈」
受付員さんが俺のスキルの数に驚く。
無理もない。
師匠が言うには、この国でスキルを2つ以上持っている人はほんのわずかしかいないらしく、4つ以上持っている人は俺以外いないのだという。
「……壊れたのかな?……でも、輝かしい昔の時代に作られたものが壊れるわけないし」
『術式の詳細を、印刷しまス』
故障を疑う受付員さんをよそに、魔道具が1枚の紙を吐き出す。
そこには、俺の各スキル名とその詳細が書かれていた。
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ヨウロ・ギンズの所持術式
【
自分の身体から真水を湧かすことができる。
【
水場からタコの触手を出すことができる。
【
カジキ型の剣で自分を狙った攻撃をカウンターする。
【
胞子をまき散らし、そこからワカメのような植物を生やす。
植物が光合成で得た魔力は使用者に還元される。
【
実体を伴わないシャチのような性質を持った魔法弾を身体から出せる。
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「やっぱぶっ壊れているやんけこの機械!人間がこんなにスキル持てないだろ!」
受付員さんがなぜかブチ切れ始める。
「あっ……俺、本当に全部持っているんです!」
「受付員さん、今からヨウロが直接見せてくれるみたいなんで見ててください!」
ナーシェンが身も蓋もないことを言う。
しかし、この誤解を解くにはあまりにも良い手段である。
俺は実行することにした。
「はい、見せます!まず濡らします!」
まず、俺は全身を藍湧水の効果で濡らし、その姿を受付員さんに見せつけた。
「で、こうやって水場からタコの触手も召喚できるし、あとコンブも生やすこともできます!」
ズチュッ!ホオオオオ……
俺は赤蛸足で濡れた身体を起点にタコの触手を生やし、同時に緑和布によって生成した胞子で自分の周囲に和布に似た植物を生やした。
「んで、シャチみたいな魔法弾も出せますし、自分への攻撃はカジキの剣が出てきてカウンターできます!」
ズシャアアアアア……ガキンッ!
そして、青鯱魂による攻撃を自分に向けて行い、それを黄剣魚によるオートカウンターで防いだ。
「……マジかよ。ワリい、さっきはキレてごめんな」
素の口の悪さを隠さなくなった受付員さんが、謝罪を行う。
「んじゃ、今から冒険者カード作るわ。少し待っててな……」
受付員さんが冒険カード発行用の魔道具にまっさらなカードを差し込むと、魔道具が騒々しい音を立て始め、カードの印刷が始まった。
そして数分後、俺の手元には銅のような色を基調とした冒険者カードが収まっていた。
「このカードはな、冒険者しか使えないサービスの利用が必要だから、なるべく無くすなよ?」
「はい!」
俺は少しドジな側面があるから気を付けないと。
「これでアンタの登録は終わりだ。んじゃ、次はそこの赤毛まじりで白髪の嬢ちゃんを登録するわ」
「はいっ!お願いします!」
その後、ナーシェンの登録もつつがなく終わった。
「んじゃ、新米3級冒険者ども……頑張れよ!」
こうして、俺たちの冒険者人生が始まったのであった。
それから、俺たちはギルドセンターの掲示板に目を通し始めた。
「さてと、3級でも行けそうな依頼探すか……」
ギルドセンターの掲示板には、個人や企業、自治体や国などからの依頼が張り出されている。
そして、2級や1級ではないと受託できない依頼もそれなりにあり、そういう依頼ほど報酬が高く設定されていることが多いのだ。
今は一番下である3級冒険者であるためそこまで稼げないが、いつか絶対に上り詰めてたくさん親に仕送りできるようになってやる。
「あ!これいいんじゃない?」
ナーシェンがとある依頼を指さす。
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依頼名:大量発生したクサクイスライムを倒してください
依頼主:ジュノー家
概要:首都ナゴンの南にある農園地帯付近にて、3級魔物であるクサクイスライムが大量発生したので、駆除をお願いします。報酬はスライムを倒した数×100サキン
受託条件:何級でも、何人でも可。
注意事項:最近、近辺で2級魔物であるスライムイーターが目撃されているので、3級の冒険者さんは気を付けてください。なお、倒したら1匹あたり5000サキンの追加報酬です
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「おー、いいじゃん。スライム倒しただけ報酬増えるのがもう最高じゃん」
「んじゃ、いっくぞぉー!」
こうして、俺たちは農園地帯付近を目指し、首都ナゴンを目指すのであった。
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