LV85装備
トミーが加わったところでNMの戦利品、ドロップ品のお披露目だ。スタンリーが端末に収納したアイテムを次々に取り出してはテーブルの上に置いて並べていく。
テーブルの上に片手剣、腕輪、鱗、盾 の4つのアイテムが置かれた。皆が一斉に端末をテーブルの上に置かれているアイテムに近づけた。
AIのミントに聞くとそれぞれのアイテムについての説明がある。
片手剣は水属性の片手剣。水を苦手とする魔獣に対してダメージがアップする効果がある。LV85から装備可能。
腕輪は回復の腕輪で、装備していると常時少しずつ体力が回復するらしい。これはすごい腕輪だ。使用レベルの制限もない。
鱗は半魚人の鱗とだけ説明があった。合成の原料となるのかな?ミントに聞いても情報を持っていないというし。高レベルの合成原料の様な気がする。
盾は水の盾という名前で水系の魔法に対して耐性が上がる。LV85から装備可能。
「すごいのが出たわね」
俺と同じ様にAIから情報を得たクラリアが言った。他のメンバーも同様に凄いなと言っている。
「回復の腕輪なんてレアアイテムじゃない。しかも使用レベルの制限がかかっていないのでしょう?」
「剣と盾もすごいな。属性がついた武器はPWLでは初めてじゃないか」
トミーの言う通りだ。俺も属性武器、盾なんて初めて目にしたよ。水属性ということはこれから他の属性の武器や防具が出る可能性があるということだ。
最初の取り決め通り、これらのドロップは攻略クランの持ち物になった。やっぱり滅多にお目にかかれないNMってのは良いものを落とすんだな。腕輪以外はまだ装備できないが逆にレベル上げのモチベになるだろう。
「使用可能レベルが85からということで、これはタクが言っていた忍具の刀や防具と同じだな」
片手剣の仕様可能レベルが85、盾もしかり。
「タクがこの街の忍具店で聞いた防具と刀もLV85から装備可能だったわよね」
「その通り」
この場にいる全員が理解していた。レベルを85に上げると何かが起こるのだと。そこで次のステージが見えてくるのだろう。
「85まで上げるのか、きついなぁ」
攻略クランのジャックスが言った。彼はサハギンNMのドロップ品で唯一使用レベル制限のなかった回復の腕輪を手にしている。盾ジョブの彼が持つのが一番良いだろうとスタンリーが言い、他のメンバーも同意していた。
回復量については検証が必要だけど、効果があるのは間違いない。僧侶の負担が減るし当人の生存率も上がる。妥当だよね。
それでレベル85だ。スタンリーとクラリア、トミーら3人は70から85に上げる為の必要経験値は恐らく1から70までで稼いだ総経験値並み、下手すりゃそれ以上となるだろうと予想している。レベルが上がるとネクストが増えていくこのPWL。彼らが言っていることが誇張じゃないってことは俺でも分かる。とんでもない経験値が必要だぞ。
「レベルが85になって初めて試練の意味が分かるんでしょうね」
マリアが呟く様に言った。
「このエリアのレベルの上限が85かもしれない」
スタンリーが続けていう。エリアの広さはまだ分からないので考えられる可能性を皆が言い合っている。そうやって話し合うことで見えてくるものがある。
試練の街という名前のこの街で今は入る事が出来ない試練の塔。その塔の中に入る、或いは入る為のトリガーを手にする資格が出来る。それがレベル85なんだろう。
レベル85。しばらくこの街でのキーワードになりそうだ、
俺はのんびりとやるつもりだが情報クランや攻略クランはこれからはレベル上げ集中モードで活動するんだろうな。彼らに頑張ってもらおう。エリア毎にレベル上限が決まっているのでこのエリアに来る時点で70で横一列に並んでいた俺だけど、ここからレベル上げだけを頑張るつもりはない。他にもやることが沢山ある。
クラリアがしっかりと情報収集できたと攻略クランのメンバーにお礼を言った、
ドロップ品のお披露目が終わるとそのまま今のNM戦を振り返るのと装備品、そしてこの試練の街の話になる。
「サハギンのNMのリポップ時間をカウントしないと。今度情報クランでやる時にもタクにヘルプをお願いしてもいい?」
「主に任せるのです。安心なのです」
俺が返事をする前に頭の上にいるリンネが言った。おいおいと言う前にクラリアからお願いねと言われてしまう。
「あのNMについては忍盾が有効かもしれないけど俺の忍盾は決して万能じゃないからな」
俺は忍者で盾をやっていて気がついたことがあったのでこの場で言う。皆が俺に目を向けた。ここはしっかりと言っておかないといけない。
「忍者の盾ってさ、回避盾だろう?回避だとヘイトがそれほど稼げないんだよ。だから短時間なら良いけど長くなるとタゲがふらつく気がする。ポーションや遁術を併用してヘイトを稼がないと、空蝉だけじゃあ長時間タゲをキープできないと思うよ」
なるほどと頷く参加者達。このヘイト管理の感覚というのは実際に魔獣の矢面に立たないと分からない。
「言われてみるとそうだな。エリアボスにしても今日のサハギンNMにしてもタクが盾をしていた時間はそう長くない。もし時間が長引いていたら魔法を撃っていた後衛にタゲが移ったかもしれない」
スタンリーが言ったがその通りだ。エリアボスの場合はまた対峙していたので刀で攻撃してヘイトを稼ぐ事ができた。遠距離攻撃の相手になると盾としてヘイトを稼ぎながらタゲを固定する術やアイテムを持っていないと厳しくなる。
敵対心をアップさせる効果がある装備品をまだ目にしていない中、忍者の回避盾はやっぱり緊急の一時対応用なんだよ。
「それにしても今日のNMはナイトと忍者の2枚盾でないと倒せないでしょう。タクの出番はこれからもあると思うわよ」
サブマスターのマリアが言うとその通りだと全員が頷いている。当てにされても困るんだけどな。きちんと万能じゃないと言ったから大丈夫だろう。
「ヘルプするのは全然大丈夫なんで、いつでも声かけてくれて構わないから」
「いつでもヘルプするのです。主のヘルプは完璧なのです」
俺が言った直後にまたリンネが言う。お前もタロウも俺を過大評価しすぎなんだって。
「そうだよね。リンネちゃんの主は完璧よね」
マリアが茶々を入れるとその通りなのですと答えているリンネ。俺の後ろからもタロウがガウガウと言っているし。勘弁してくれよ。
攻略クランでの話が終わると俺はそのまま街の外に出た。せっかく試練の街にいるのだから明日とは言わず今日も少しでもレベルを上げたい。NM戦への移動の際のタロウの気配感知を見ているので森の中でも大丈夫だろうと俺達は草原から森に入っていった。
いやもうタロウとリンネ様様でしたよ。気配感知で事前に木に擬態しているトレントを見つければリンネが魔法を撃ってくれる。俺は空蝉の術で蔓をかわしながら蔓に刀を振るうが、そうしている間に敵が倒れてしまう。フォレストビーという大きめの蜂も空蝉で交わしながら刀を振っているとタロウのキックやリンネの魔法でバタバタと倒れていく。おかげでレベルが72に上がった。トレントの根はドロップしなかったが印章が3枚ほどドロップしてくれた。戦闘をしたのかタロウもリンネも満足そうだ。
開拓者の街に戻ると縁側で座っている俺に寄ってくるタロウとリンネ。
体を押し付けてきたタロウ、俺の腕の中にいるリンネを両手で撫でてやる。
「タロウとリンネが頑張ったからレベルが上がったぞ」
「タロウもリンネも主のために頑張っているのです」
「ガウガウ」
なんて殊勝な事を言ってくれる。だから撫でろというリクエストなんだけどそれでもそう言ってもらえると嬉しいものなんだよな。ランとリーファは指定席の精霊の木の枝に座ってゆっくりと体を左右にゆらせている。
今日はNM戦とレベル上げで終わった1日だった。明日は畑の世話をしよう。ランとリーファの相手もしないといけないしな。
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