苦労しているらしい
情報クランと攻略クランは合同で北を攻略しているが思いの他手こずっているという話を彼らのオフィスで聞いてた。ちょうど外から帰ってきたタイミングがトミーらと同じだったんで、ちょっと話をしていかないかと誘われて彼らのオフィスにきている。
「タクの情報を元に山を探したら奥に続く山道を見つけた。ただその山の中にいるのが相当レベルが高くてな。しかも結構な頻度でリンクしてくるんだ。LV65のパーティでもなかなか前に進めない。攻略が殆ど進んでいないと言っても良い程だよ」
本当にきつそうな顔をしているトミー。攻略組と同じレベルを持っている彼らでも苦労するとは相当なんだな。
トミーがそう言うと、彼の隣に座っているクラリアが続けて言った。
「しかも山道が険しいのと道幅が狭いの。なので今は攻略よりも山の中で経験値稼ぎ、レベル上げをしているのよ。もっとレベルを上げないと攻略できないわね」
「簡単には向こう側にあると言われている街にたどり着けないんだね」
その通りだと頷く2人。
「ただタクが教えてくれたのであの山の向こうが盆地になっていてそこに開拓者の街という名前の街があることが分かっている。それだけでも攻略のモチベーションが違うんだ。これは攻略クランの連中もそう言っている。実際にタクの言葉を聞いて北部の山を集中的に探索した結果、山の奥に続く道が見つかったしな。それにしてもさ、この山裾の街の情報といい北の開拓者の街の情報と言い、相変わらずとんでもない情報を引っ張ってくるよな」
テーブルの上に置かれているジュースを一口飲んでからトミーが言った。
「相変わらずって、他の用事でテイマーギルドに行った時にたまたま流れでそう言う話になっただけだからな。狙って動いている訳じゃないよ」
実際その通りだ。何かを得ようとして話をしてるんじゃないからな。
「だから凄いんだよ。攻略クランのスタンリーやマリアは感心しまくっていたぞ。情報クランではタクはNPCからの好感度が非常に高いんじゃないかと見ている。だから色々な情報が入ってくるんじゃないかとね。これは攻略クランも同じ意見だ」
えらく褒めてくるな。
「どうだろう?NPCを沢山知っている訳でもないし行く場所は大抵決まってるよ?」
トミーに言われてもピンとこないんだよな。限られたNPCとは確かに仲は良くなっているけどNPCの総数から見たらほんの一部の人たちだし。
「そうは言うけど普通なら第3の街の公園で最強NMのトリガーになる黒翡翠の欠片を貰うなんてあり得ないのよ」
トミーに続いてクラリアが畳みかけてくる。
そう言えばそんな事もあったな。そのおかげで転移の腕輪を貰えたけど。
「恐らくだが」
そう言ってトミーが自分の考えと言うか想像を話始めた。彼によれば会話の中にトリガーになる言葉があり、プレイヤーがそれを口にすることでNPCが新しい情報を開示するプログラムになっている。
「この街の時は忍術という言葉がトリガーになっていて、ここには無いが東の街にはある。という答えが返ってきた。今回はモグラという言葉がトリガーになっていて、それをテイマーギルドで話をしたことで農業、そして開拓地という情報を開示してきたんじゃないかな。もちろんトリガーを見つけてもその後の会話の流れで話さないこともあるだろう。タクはトリガーを引き出してそのまま正解まで引き出したんだよ」
言われてみればそういう可能性もあるだろう。ただ正解を引き出していると言われても自分自身はその場の流れで普通に会話をしているだけなんだけどな。
「言いたいことは分かるけどさ、俺以外にもNPCとしっかり会話しているプレイヤーがいると思うんだけどな」
俺は思っている事を言う。買いかぶりすぎだと。
「もちろん。だからこれから別のプレイヤーが情報を取ることがあるかもしれない。北の開拓者の街の情報に限らず、新しい情報を持っているNPCは他にもいるのだろう。それぞれのNPCにそれぞれのトリガーがあってそのトリガーを引き当てると最新の情報を話してくれるんじゃないかな」
ああ、なるほどな。今のトミーの話は腑に落ちた。NPCとの会話の中でトリガーが出ればそれがスイッチになって新しい情報を教えてくれる可能性が高いということか。北の開拓中の街の話はモグラから始まってテイマーギルドのNPCが教えてくれたけど、他のNPCに違うトリガーワードを話せば同じ様に北の街の情報を教えてくれるかもしれない。トリガーとなるワードはいくつもあってそこから新しい情報が引き出せるということだ。
「もちろん情報ギルドとしてもいろんなNPCに話かけている。ただ今まではトリガーを会話の中で出せていないのだろう」
「となるとやっぱりタク頼りね」
トミーとクラリアにそれは勘弁してくれよと言う俺。トリガーのことを気にして会話なんて出来ないし。
それにしてもこのPWLは面白い。仕掛けが凝っているというか単純な戦闘だけでは攻略が出来ない様になっている。フィールドでレベルを上げるのは必須だろうがそれだけでは前に進めない仕様だ。街の中をうろうろしてNPCと話をしたり、ひょっとしたら合成関係からも何か情報が出るかもしれないし。闇雲に敵を倒しているだけじゃあダメなんだな。
今までのゲームとは毛色が違っていて新鮮で俺にとっては面白い。
クラリアとトミーとの話を終えると俺はその足で久しぶりに街の外に出た。帰り際に2人からまたよろしくって言われたけどそんなにしょっちゅう湯気が出ている様な情報なないって。
俺が外に出たのは転移の腕輪を実際に使ってみようと思ったのと、タロウとリンネを呼び出して北方面に進んでそこで出会う魔獣を相手に経験値稼ぎをしようと思ったからだ。レベルは上げておいた方が良いからね。まだLV55。60まで上げたら術2を買うことが出きる。当面の目標はLV60だ。
タロウもリンネもレベルが上がってまた一段と強くなってる。リンネは尾が4本に増えたので魔法の威力が増大していた。これは大きな戦力になる。
「タロウもリンネもまた強くなってるぞ」
「ガウガウ」
「主の為に強くなるのです。強くなって主に楽をさせてあげるのです」
呼び出すとすぐにじゃれついてくる2体の従魔。しっかり撫でてやると2体とも大変ご機嫌がよろしくなる。
「そうか、期待してるぞ」
「ガウガウ」
「任せるのです」
街の外での魔獣退治。この日はレベルは上がらなかったがしっかりと経験値を稼いだ俺はフィールドの上で転移の腕輪に指先を当てた。するとウィンドウに今まで訪れた街の名前が浮かび上がってきた。その街をタップすると移動できるのだろう。始まりの街をタップすると、俺と2体の従魔が光に包まれ、光が消えた時、俺は始まりの街のギルドの転送盤の上に立っていた。従魔はいない。
すぐに路地の奥にあるテイマーギルドに行って奥の広場に行くとタロウとリンネがそこにいた。当たり前なのだがそれでも姿を見ると安心する。傍に寄ってきた2体を撫でながら大丈夫だったかと聞くとタロウは問題ないとガウガウと言い、
「リンネも平気なのです。元気なのです」
とこちらも問題なさそうだ。安心して山裾の街に戻ってきた。
転移の腕輪があれば片道というか帰りを気にせずにフィールドを攻略できる。やばくなったら飛んで戻って来ればよい。
この転移の腕輪。皆が欲しかっていたのもわかる。やばくなったらすぐに逃げられるし転移の起動も早い。移動にお金がかからないのもグッドだ。反則級に便利だよな。
PWLがPKありのゲームなら転移の腕輪を殺してでも奪い取るという事になるのだろうがPWLはPKがない。持っている持ち物を人に盗られる心配が要らない。ヌルイと言われていてもストレスが無い分こっちの方がずっといいよ。
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