タロウがLV20になった

 それからもPWLにインしては東の森の奥でレベル上げをし、時々採掘をしていると忍者のレベルがようやく20になった。驚いたのは従魔のタロウも自分と同じタイミングでLV20になったことだ。フェンリルのレベルが上がる基準がわからないが20で揃ったのはとにかく嬉しい。


(従魔のレベルが20になってスキルを覚えました)

 

 AIのミントの声がした。

 ん?スキル?


(タロウのスキルの内容とその効果は分かる?)


(はい。タクと自分自身に対して攻撃力がアップする集中、それと後ろ足蹴りという特殊攻撃の2つです)


 凄いな。攻撃力ってことはSTRなのかな。それとタロウ自身が後ろ足蹴りを覚えたのか。今までの前足での攻撃に加えて後ろ足で蹴りもできるとなるとこれは強くなるぞ。


(ミント、その攻撃力アップの集中だが効果時間は分かるかな?)


(はい。効果時間は5分、リキャスト1時間です)


(攻撃力アップの具体的数値は?)


(それは分かりません)


 答えを教えてもらえるとは思っていなかったけど予想通りだった。PWLは数値系のデータは徹底的に隠してくる。実践で感覚をつかむしかないということらしい。


「タロウ、お前も強くなってるぞ」


 俺は足元に大人しく座っているタロウを撫でながらそう言うと顔を上げてそうだろう?という表情になって見つめてくる。


「ちょっとスキルを確認しようか」


 俺がそう言うと座っていたタロウも立ち上がった。森の中を歩いているとゴブリンの姿が目に入ってきた。


(ゴブリンですLV15です)


 ちょうど良い相手だ。


「タロウ、集中をお願い」


「ガゥ」

 

 と唸ると同時にタロウの体が光出した。その光がタロウと俺を包み込む。これが集中のエフェクトか。全身がふわっと光りに包まれるとバフがかけられたってのが分かる。


「今回はタロウが仕留めるんだ。後ろ足の蹴りでやっつけろ」


「ガゥ」


 こちらを認識したゴブリンが森の中を真っ直ぐにこちらに向かってくる。ターゲットは俺だ。タロウは俺の背後に立っている。


 突っ込んできたゴブリンを交わしたと思ったら俺の後ろにいたタロウがあっという間に後ろを向くと後ろ足で近づいてきたゴブリンを蹴飛ばした。タロウの蹴りをまともに喰らったゴブリンが文字通り吹っ飛んでいき、森の木にぶつかったかと思うとすぐに光の粒になった。続いて見つけたゴブリンも同じ様にタロウの後ろ足の蹴りで吹っ飛んで倒す。


 想像以上の威力だ。俺がターゲットになって攻撃している間に横からタロウが後ろ足蹴りをすれば格上であっても大きなダメージを与えられそうだ。しかもバフと違ってこっちはリキャストがない。


「凄いぞ、タロウ」


 どうだと言わんばかりに寄ってきたタロウの首に両手を回して抱きしめると舌でペロペロと俺の首を舐め回してきた。


 その後集中の効果が残っていたので俺も一人でやってみたが刀を一閃してゴブリンが絶命した。全身に力がみなぎっている感じがする。タロウのバフはかなり強力だ。これは大きい。


 タロウの進化に満足し、始まりの街に戻ってきた俺は、誰かいるといいなとダメ元で情報クランに顔を出すとなんとクランマスターのクラリアがオフィスにいた。顔を見るとすぐに応接室に案内される。オフィスには彼女以外にもプレイヤーが多くいて皆忙しそうに動いていた。


「新しいエリアはサブマスターのトミーを責任者にして探索中なの。情報クランの本部は今はまだここだから私かトミーのどちらかがいないといけないでしょう?」


 クラリアによると新しいエリアの街、彼女たちは第3の街と呼んでいるらしいが、その街からここまで転送サービスがあって移動が楽なのだと教えてくれた。第3の街でオフィスを借りるまでは、まだここが拠点らしい。


「それで、ここに来てくれたってことは何か情報があるってことでいいのかしら」


「そうなんだよ」


 俺は忍者のレベルが20になったことと同時に従魔のフェンリルも20になって新しいスキルを覚えたと言うとクラリアさんが詳しく教えてと身を乗り出してきた。


「まず忍者だけどLV13以降はレベルが上がるごとに少しずつステータスが上がってきていて20でも同じだった。一方、従魔のフェンリルのタロウだけど20になったところで本体と俺に対して攻撃力をアップさせる集中というスキルを覚え、そしてタロウ自身が後ろ足蹴りという特殊攻撃を覚えたよ」


「タクの従魔であるフェンリルがLV20で特殊スキルを覚えたってことね」


 そうだと頷く俺。スライムやフォックス、そしてこれからフィールドでテイムして従魔になったペットもレベルが上がると特殊なスキルを覚えるかも知れないと言うとその可能性は高いわねと言うクラリア。


「このエリアってテイムしたくなるモンスがいなかった分、新エリアに期待しているプレイヤーが多いの。今の情報はそう言う人たちのモチベが上がるわ。もちろん今テイムしている従魔のステータスアップする可能性もあるだろうしね」


 そうそう、テイムしている従魔が強くなったり効果が大きくなればテイムのし甲斐があるだろう。


「タロウの場合だけど最初は俺よりレベルの上がりが遅かったんだよ。それが途中からレベルの上がりが早くなって20で並んだって感じだ」


「なるほど。タクの場合はタク自身がLV1の時から従魔にしてるからね。他のプレイヤーはそうじゃない。でもいずれは従魔とプレイヤーがどこかのレベルで揃うことはありそうね」


 情報クランのリーダーだけあって分析力が高い。


「その後の従魔の伸びがどうなるのか。LV21の時点で教えてくれるかしら」


 もちろんと答えてクラリアとの話は終わった。


 情報クランから報酬を貰った俺は今日はこのまま落ちようかなと思って冒険者ギルドに向かって大通りを歩いていると電話が掛かってきた。リサからだ。


「もしもし、リサです。今いい?」


「大丈夫。始まりの街の大通りを歩いてる」


 答えながら通りの端に移動する。


「私達、今日次のエリアの新しい街に着いたの」


 私たちとはリサとルリのことだろう、おめでとう。


「タクはまだ始まりの街にいるの?」


「ああ。2つ目の村にもまだ行けてないよ。そろそろ行こうかと思ってるけどね」


「こっちの街、テイマーギルドがあるのよ。ただ始まりの街の様に従魔を売ってはいないけどね。ただこっちで預けて始まりの街で呼び出せるの」


 その情報はこっちのテイマーギルドで聞いていた情報だったが、なるほどと答えると、本題はそれじゃないのよとリサが言った。


「それよりもさ、この街で忍者の防具と装備、刀だっけ?それが売ってるよ」


「そうなのか!」

 

 思わず声が大きくなった。それは良い情報だ。すぐにでも行きたいがその前に次の村に行かないとな。


「わざわざ教えてくれてありがとう」


「いえいえ。もしエリアを超えると時にヘルプが必要だったら遠慮なく言ってね。私とルリは手伝いするからさ」


 そこで今の情報クランの話を思い出した。彼女たちの従魔はどうなっているのだろう。


「分かった。その時はお願いするよ。ところでお二人のレベルはいくつなの?」


「2人ともLV31よ」


「従魔のフォックスは?」


「そっちはまだ19なの」


 リサによると2つ目の村での野良募集で新エリア攻略する為のパーティ参加資格が最低LV30だということで村の周辺で彼女らと同じ目的の他のプレイヤーとパーティを組んでレベル上げをしたらしい。その時に従魔で1枠使ってしまうので2人とも従魔を使うことができなかった結果当人と従魔のレベルが開いたのだという。


 そこで俺は自分の従魔がLV20になったら特殊攻撃とスキルを覚えたと言って具体的なスキル、そして従魔の特殊攻撃について話をする。


「それは凄いわね。私たちの従魔もレベルが20に上がったら何かあるかもしれないね」


「俺の従魔の情報は情報クランに売った。そっちも変化があれば売ったらいいよ」


 電話を切り、ギルド横の宿に向かって大通りを歩きながら明日は次の村を目指して行こうと決めた。次の村の周辺はモンスのレベルが高いという話だ。そこでまずはLV30を目指そう。


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