書き出しから設定情報だらだら垂れ流すのやめろ

「もしも君が、ほんとにこの話を聞きたいんならだな、まず、僕がどこで生まれたとか、チャチな幼年時代はどんなだったのかとか、僕が生まれる前に両親は何をやってたかとか、そういった《デーヴィッド・カパーフィールド》式のくだんないことから聞きたがるかもしれないけどさ、実をいうと僕は、そんなことはしゃべりたくないんだな。」


野崎孝訳、ライ麦畑でつかまえての冒頭文です。その、デーヴィッド・カパーフィールドの冒頭文も見てみましょうか。


「私が自分の伝記の主人公になりおおせるか、あるいは他の誰かがこの地位を占めるかはいちおうおいて、このことだけはぜひ書いておかなければならない。私の人生の発端をもってこの物語を始めるに当たって、まず私がある金曜日の夜の十二時に生まれた(そう聞かされもし、かつ、そう信じてもいる)ことを記録しておく。なんでも柱時計が打ちはじめると同時に、私は産声をあげたのだと言われている。」

(訳 猪俣礼二)


さあこれだけを読んで、どっちが面白いですか?というか、世界十大小説の1つとされる名作をこうも大胆に、しょっぱなからこきおろして。めちゃくちゃ面白いのはサリンジャーの方でしょう。


主人公が何者で、舞台はどこで、時期はいつで、どのような境遇をたどってきたかなんて、くだらない。例えば自分が落語家になって自分の話を始めるとして、デーヴィッド・カパーフィールド的な語り出しをして、客観的に自分の話し方を評価したときに、面白いと思えるんですかね。無論つまらないですよね。聞いてる方もつまらないんです。


設定を説明するパートだからつまらなくてもオッケー、なんて話は無い。それ怠慢なんじゃないのか。デーヴィッド・カパーフィールド的な書き出しはやめよう。今回のアドバイスはそれ。

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