「文章が説明的すぎる」

「いまからあなたを現行犯逮捕します。私は警察ではありませんが、今そうやって階段にて女性の下着を盗撮する犯行の最中であったため、私はあなたに対してこうして逮捕を宣言できるのです。さあ、近くの署に行きますから、着いてきてください。」


勘弁してくれよって思う。これ口に出して読んでみろよ。駅の階段で犯人の手を掴んで声高らかに現行犯逮捕を宣言する舞台俳優が現実のどこに居る。やばいだろ。


説明は短い方が良い。不要な情報は省いた方が良い。というか、文章にぜんぶ書き出そうとしない方が良い。むしろ、読者が解釈する余地を作った方が良い。


「お前、今、盗撮してただろ。」で十分伝わる。発言者が話しかけている相手に対して敵意を向けていることも、その相手を現行犯逮捕しようとしていることもなんとなく分かる。そっちの方が自然じゃ無いですか?


ここで論じているのは小説の書き方であって、辞書や教科書や説明文の書き方ではありません。例えば「お前、今、盗撮してただろ。」という文面だけでは[現行犯逮捕]のことを連想するのは難しいかも知れませんが、少なくとも声をかけることで相手を呼び止めている。話しかけている相手の悪事を指摘しているという点さえ読み取れれば、あとは読者が自分の想像力によって、「これは発話者が悪人を捕まえている場面なのだ」という理解に辿り着くことができる。出来ない読者は悪い読者だ。


それに、文面通りのことが読み取れさえすれば作品の面白さをすべてしゃぶりつくしてしまえる作品は、分析に向いていない。「本文に書かれていることが全てです。」「本文に書かれている通りです。」それだけしか言えない。分析する甲斐が無い。本当に勘弁してください。もっと読者の想像力を引き出すことを考えて小説を書いてください。

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