第9話

「祐樹、俺たちなんで転生したんだろうな」

 お見舞いに来てくれた樹が話し出した。

「そうだなーまぁでもこう考えればよくない?『死んだら転生して別の世界でまた新しい人生をスタートさせる』って」

「それもそうか」

「そういえばアーサーは?」

「いるよ   アーサー!おいで!」

 アーサーが個室のドアを開けて入ってくる。いつも通りみすぼらしい格好だ。悲しくなってくる。

「大丈夫?まだ顔色よくないよ」

「……さき……?」

 そういって俺はまた気を失った。


 気を失う前一瞬、樹のハッとした顔が視界の端に移った。


 次に目を覚ましたのはあれから一週間たったころだった。

「俺はこのまま死ぬのか?」

 俺がそうぼやくとアーサーが顔を赤らめて俺に近づいてくる。

 アーサーは小さなこぶしで俺の腹を思いっきり殴った。

「……っ!痛」

 やり返す気力はない。

「佑樹!ふざけんなよ‼」

 アーサーがわなわなと震えている。

「病気がなんだ!がんばれよ‼」

「わかってる。でも……」

 もう一度俺の腹に一撃が入る。

「そうだ!俺頑張る‼」

「その意気だな。がんばれよ」

「あぁ頑張ってやるさ!」

 俺はこぶしを差し出す。アーサーの小さなこぶしと強くぶつかった。

「二人ともいいのか?」

「いいのかってどういうこと?」

 アーサーがジト目で樹をにらむ。

「い、いやほら、ちょっとお取込み中だったじゃん」

「そうなんだけど佑樹が『このまま死ぬのか』ってぼやきやがって」

「それはだめだな~佑樹」

「でも頑張るって彼言ってたし」

「そっか。じゃあ僕たちは帰るからね。ゆっくり休んで。原因がわかるまで入院だって」

 樹とアーサーは帰っていった。


 俺は腕を動かしてみる。……うまく動かない。でも俺は死なない。絶対に。

 そう思った瞬間全身に力がみなぎってくる。




 でもあんまり順調には回復しなかった。何回か気を失ったし、嘔吐したこともあった。

 それでも先生たちは根気強く治療やリハビリをしてくれた。




 俺は三年ぐらい入院していた。やっと退院した時にも原因はわからなかった。

「はぁ~あ転生してから三年か」

「な~に気取ったこと言ってんの?アーサーが家で待ってる。……荷物ぐらい自分で持てよ」

 あーだ、こーだ言いながら樹は俺の荷物を持ってくれた。やっぱり樹っていいパートナーだよ。

「で?原因は分かったの?」

「いーや。まだわかんない」

「そっか。でも元気になってよかった。また一緒に遊ぼうぜ」

「おう!」




樹の父親に見つからないように裏口から家に入る。やっぱり樹の家は豪華だな。

「佑樹!退院おめでと‼」

 アーサーが抱き着いてきた。

 やっぱりアーサーが紗季に見えるんだよな。俺の気のせいか?


 え~と樹の部屋が広くなってる。

「ね、ねぇこの部屋どうしたの?」

「あぁ物が多くなったから部屋を大きくしてもらったんだ」

「そっか。金持ちはいいね~」

「だから、それやめてって」

 俺は荷物を開ける。ほとんど下着と漫画だ。まぁ三年もたてばそうか。


 改めてアーサーを見る。アーサー、大きくなったな。

 樹が俺の心を読んだかのように

「お前は父親か何かか?」

 とツッコんだ。

 少なくてもこの子の親ぐらい愛したんじゃない?少なくても樹は。俺は三年間入院してたからね。多分子供の三年間ってかなり大きいと思う。

「しばらくはさ、俺じゃなくて祐樹と遊んだら?ゲームも」

「そっか。ねぇ祐樹?ゲーム教えてよ。上手だったでしょ?」

「俺でいいのか?樹のほうがうまいぞ?」

 樹とアーサーがジト目になる。

「祐樹、さっきの祐樹の発言、聞いてなかったな?」

「ごめん、ごめん。アーサーこっちおいで」

 アーサーとソファに座ってゲーム機を握る。

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