第4話

 アーサーが来てからしばらくたったある日のことだった。俺とアーサーは珍しくちゃんとした服を着ていた。二人とも紺のパーカーに黒のジーパンを着ている。俺は樹から何も知らされていない。

「なぁ、アーサー」

「どうした?」

 アーサーはすっかり俺になついた。でも樹とはちょっと距離を置いている。本当の兄弟みたいに俺とアーサーは仲良くなってしまった。奴隷も意外と悪くないかもね。

「今日って何か聞いてる?」

「ううん。聞いてないよ」

「そっか。なにすんだろ」


 トイレに行っていた樹が帰ってくる。

「二人ともなんの話してたの?」

 アーサーはやっぱり俺のパーカーの裾をつかんだ。

「え?今日なんでいつもの服じゃないのかなって」

「あぁ二人とも今日から学校に行ってもらうよ。まぁ俺も行くんだけど。君たちは奴隷じゃないってことにしたから」

 アーサーは喜んでるみたいだけど、俺はどっちかっていうと行きたくない気持ちのほうが大きい。前世であんなにいじめを受けたところだからだ。

 俺のいやそうな顔を見たのか、樹は…

「大丈夫だから。俺が守ってやるよ」

「何があったか知らないけど、俺も守ってやるから」

 何も知らないアーサーも加わる。また泣きそうになってしまった。

「二人ともありがと」

「それじゃ行こっか」

 三人で歩いて学校まで向かう。あいつ(樹の父親)の車になんて乗りたくないし、乗せてもくれないだろう。



 三十分ほど歩いていると大きな建物が見えてきた。

「アーサー地に足がついてないよ」

「そういえば学校の教科書とかはどうするの?」

「今日配られるみたい」

「そっ。あれが学校?」

 俺はさっきの大きな建物を指さす。

「そうだよ。どうした?やっぱり怖い?」

「ちげーよ。そんなんじゃねーよ」

 アーサーがくすくす笑う。俺の顔は真っ赤だ。

 


 学校の前まで来ると、一人の優しそうなおばさんが立っていた。

「おはようございます。中山君、山本君、アーサー君ね」

「えぇ。よろしくお願いします」

 樹が挨拶する。

 「ほら二人とも」と樹が俺たちに挨拶するように促す。

「中山祐樹です。よろしくお願いします」

「……アーサーです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします!私は寺山です。じゃあ三人ともついてきてね」

 俺たちは寺山さんに連れられて学校に向かった。

 どんな勉強するのかな?異国の地だからここ特有のものとかもあるのかな?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る