第11話 一等星は未だ見えず
日も落ちた夜の中、都市の一角で密かに咲く『バー・石の入り江』には、静謐を好む店主の好みに合わせて、ほんのりと薄暗い明かりの中に、派手で煌びやかな都市の大通りとは正反対な調度品が並べられている。
ただ、そんな店主の思惑から外れた騒々しさが、今店を苛ませているところだ。
「今日で会ったが百年目……今度こそ不覚は取らぬぞ不埒者めがぁ……!!」
「ストップ、ストォオオオッップ!! 落ち着いて! 剣、危ない! 危ないですよおおおお!!!」
その騒ぎの主はルビーとハイリ。その原因は早くも二週間前となった彼らの初遭遇に在り、現在進行形で不覚を取ったルビーのリベンジが行われているところである。
その始まりは、ハイリの顔を見るなり剣を抜いたルビーの先制攻撃から。まさか遭遇しただけで真剣を抜刀されるなど思いもよらなかったハイリであるが、ここで故郷にて数々の死線を寸でのところで潜り抜けてきた彼の生存能力が発揮され、幸か不幸か上段から振り下ろされた剣を白刃取りすることに成功した。
唾棄すべき走馬灯を見た上で、その経験に救われたことに唾を吐くハイリ。ただし、危機はこれで終わらない。
「な ぜ 貴 様 が こ こ に 居 る ~ ~ !!!」
「待って! 待って! 斬られちゃう! 斬られちゃ~~~う!!」
何とか掴んだ真剣だが、ルビーの攻勢は終わらず、そのまま彼女は体重をかけて押し込んでくる。それを怪力一本で耐えるハイリであるが、この状態がいつまで続くことか……少なくとも、一瞬でも気を抜けばハイリの体が割られた竹のようになることだけは確かだ。
しかしなぜ彼女はこんなにも激昂しているのか。そもそも、現在ハイリは見習い兵士。いうなればルビーの部下に当たる存在だ。もしや、ハイリが警備隊に入隊していることを知らないのだろうか?
「やめな、みっともない」
「で、でもへパさん!」
「ここは酒を飲むところだよ。それともなんだ、そこの爺を怒らせてみるかい?」
拮抗が続いていると、お姉さん――へパから制止の声が掛けられた。無論、その声一つで止められるような怒りなら、端から剣を抜いていないルビーである。そんなものだから、へパはさらに忠言を重ねた。
それから、彼女はこの店の店長である老爺へと視線を向ける。
「今は客が居ない」
店内が刃傷沙汰になっている間も、落ち着いた様子で食器を磨く彼は、ため息を吐いた後にそう言った。それを聞いたルビーはぞくりと背筋に悪寒が走ったのを感じる。
「……わ、わかりました」
冷や水を浴びせられたように、ルビーの頭は冷静になった。それから、街中で私怨から剣を抜くことが警備隊の隊長のあるべき姿ではないと悟った彼女は、申し訳なさそうにして剣を引いた。
「まったく、その手の速さは相変わらずさな、ルビー」
「も、申し訳ありません……へパさん……」
それから、へパと店主へと迷惑をかけたことを謝罪したルビー。どうやら三人は知り合いであるようで、へパの言葉からはそれなりに長い付き合いであることが読み取れる。
(い、一応助かった……のか? それにしても、三人はいったいどういう関係性なんだろう)
とにもかくにも、老人二人に救われたことに心の中で感謝したハイリは、落ち着いたところで服を脱いだ。
……服を脱いだ?
「な、何をしてる貴様!?」
突如として全裸になったハイリに、先ほどの忠言も忘れて再びルビーが剣を抜く。ただ、今度はハイリの先制攻撃である。斬りかかられるよりも先に、彼は一糸纏わぬ清廉潔白の姿を使い、全身全霊の誠意を見せつける。
すなわち全裸土下座である。
「何をしているのかと言えば答えは一つ……あなたのように素敵極まりない方を怒らせた非礼を詫びるための誠意に決まっているではないですか!?」
「せ、誠意!?」
「然り!」
勢いだけである。
勢いに傾倒しすぎたせいか、どこか口調もおかしくなってしまったハイリ。しかし、勢いがついたとなればここで止まる理由はない。ええいままよとこのまま走り続ける覚悟で、彼の口先は回りだした。
「罪人が折檻を受ける姿は全裸! すなわち包み隠すこと無き潔白の証明であります! その姿をもって、今一度、ここに全力の謝意を伝えたく思いました」
「な、なるほど?」
「しかし、恥ずかしながら私は貴方様に対する非礼の所在を存じ上げておりません。許されるのであれば、その怒りの訳を教えていただけないでしょうか」
余談だが、ここまで彼が必死に許しを請う理由は完全なる下心である。モテると聞いて騎士になることを目指した変態三人衆同様、彼を突き動かすのもまた性欲。
一目惚れに近い形で惚れこんだ女性に嫌われたくない一心で、彼はその誠意を示しているに過ぎない――閑話休題。
「そ、それは……」
怒りの所在と訊かれて、思考を巡らせるルビー。もちろん、今の彼女は些か冷静さが足りていない。ただ、先ほどの忠言もあってか、多少の思考能力は残っていて、辛うじて考えを巡らせるルビーだ。
(え、えと……私は、この男に不覚を取ったから……いや、でも不覚を取ったとはいえ、この男は犯罪者ではない……だから、私が憤る理由は……ない?)
……中途半端に思考ができていることもあって、余計に混乱してしまっていた。
そもそも、彼女がハイリと初遭遇した際は、ハイリにナンパされただけ。その際に『奇策によって不意を突かれた(と彼女は思っている)が、次こそは後れを取らないぞ』と、テンパって何もできなかった自分の不甲斐なさを恥じたことが、今の激情に繋がっている。
そう考えると、ハイリは何も悪いことをしていないのかもしれない。……全裸であったことを除けば。ただ生憎と、この都市に全裸でいることを取り締まる法律はない。故に彼に対する怒りはお門違い(なのかもしれない)だ。全裸で女性にナンパしたことを除けば。
どう考えてもルビーの判断力がおかしくなっているのだが……残念ながら、それを咎められる人間はこの場に居なかった。
「見なよ爺。あの小僧、思ったよりも面白い奴さな」
「俺の店には全く合っていないがな」
居合わせた老人二人は完全に傍観に徹しているし、ハイリはハイリで全裸のまま土下座を続けている。故に、ルビーの混乱は何者にも阻まれることなく――
「……ふ、不問とする」
「ありがたき幸せ」
激情に任せて剣を抜いた己を恥じながら、彼女は剣を収めてしまうのだった。
「さ、痴話喧嘩が終わったんなら席に着きな。飲むよ」
「痴話喧嘩だなんて、そんな……俺はただ、許してもらっただけに過ぎませんよ」
「誤解だ!!」
そうして、騒動が収まったことを感じ取ったへパは、酒の席に着くように二人を促すのだった。
☆
嵐のような二度目の邂逅を果たし、一波乱が去った石の入り江では、打って変わって穏やかな時間が流れていた。
「……酒を飲むのは初めてだが、意外にいけるな」
「うちのは甘口だからな」
「かー! まったく、酒と言えば度数だろがい! 見てみぃ、この爺の腑抜けた顔を。情けないったりゃありゃしない!」
「完全に出来上がってますね、へパさん。とりあえず落ち着いてください」
飲み始めて十数分。新たな客が訪れることもないまま、時間が過ぎていった。
その中で初めての飲酒となるハイリが呟いた感想を聞いた店主が、ここに来て初めて自慢げに頬を緩ませた。
ただ、その顔が気に入らなかったのか、赤い顔をしたへパが大ジョッキ片手に罵詈を飛ばす。既に彼女は一樽分の酒を飲み干したところだ。しかも、ここに来る前によほど飲み明かしていたのだろう。出来上がるまでにそう時間はかからなかった。
そして、改めて冷静さを取り戻したルビーが、先ほどとは正反対に暴れ出そうとするへパを窘める立場に回っていた。
「……それにしても」
へパが落ち着いたところで改めて、深い赤色のワインに口を付けるルビー。ほんのりと広がる甘味に舌鼓をうちながら、じろりと彼女はへパを挟んで並ぶハイリへと睨みを利かせて喋る。
「どうして君は全裸のままなんだ? 着ることができるなら着た方がいい」
「……おっと、失礼」
どうやら、今の今までハイリは全裸のままだったらしい。よほど全裸でいることが慣れてしまったのだろう。
ともあれ、指摘されれば服は着る。この二週間で彼が養った常識の一つである。ローディアの思惑も無駄ではなかったようだ。
「ああ、そうだ」
さて、ハイリがいそいそと服を着直したところで、飲んだくれ甚だしいへパが思い出したかのように口を動かした。
「そう言えば小僧。なんか悩みがあったんだったさな」
「……だな」
「ほぅら、言ってみい。幸いここにゃ、警備隊の隊長さんもいる。自分が所属する組織に文句があるんなら、今のうちに言っておくことさな」
「所属する組織……?」
今更ながら、ここにはハイリが抱える悩みを打ち明けるために来たのだったか。しかし、こんなにも出来上がった人間に悩みを打ち明ける気にはなれないハイリである。催促されるが、はてさてどういなしたものか……と思っていると、ルビーの方から話の流れとは関係のない疑問符が飛んできた。
「なんだい、この小僧は警備隊の所属だと思ってたが、違ったか?」
「いや、警備隊の所属だぞ……見習いだが」
「……????」
どうやらルビーは、ハイリが警備隊の新人であることを知らなかったらしい。
「外部入隊でローディアが試験を行ったのは耳にしていたが……まさか、君だったとは」
「あんの凍眼鏡……」
「しかし、あの後、君は衛兵たちに連行されていなかったか? そもそも、元よりこの都市の人間ではなかったと思うが……」
「連行された先の牢屋で、懲罰代わりに入隊させられたんすよ。一年先まで強制兵役だと」
「なんだと?」
入隊の理由をハイリから聞くたびに、ルビーの目から感じ取れる疑問の色合いが強くなっていった。
同時に、アルコールの回ったへパが口を挟む。
「犯罪者に対する対応で警備隊に入隊させるなんて聞いたこと無いさな」
「理由は知らねぇよ。どちらかと言えば俺は巻き込まれた側だ。先に居た三人が、この都市じゃ相当の問題児だったって聞いてる」
「問題児というと、あの宿屋の三人か」
カウンターで話を聞いていた店主がぽつりと、問題児に関する心当たりを呟いた。確か、ロッゲの実家は宿屋を経営しているんだったかとハイリは思い出しつつ、本当に問題児として有名だったのかと呆れる。
「ちなみにその三人は何したんだい?」
「酒に呑まれて全裸でナンパしたんだとよ。なんて奴らだ」
へパの素朴な疑問に答えたハイリは、「本当に信じられないことをする」と言葉尻に付け加えた。ただ、その意見には三人の呆れた視線が返されるだけだった。
「普通なら注意程度だねぇ」
「罪を重ね過ぎたんじゃねぇの? 初犯と再犯じゃ重さが違うだろ」
初犯と再犯の違いに関しては、彼は故郷の村で嫌というほど味わっている。捕まるたびに重くなっていく拷問の如き折檻は、今でも思い出したくない記憶の一つだ。
「ふーん……ま、ローディアの坊主のことだ。また何か企んでるさな」
どうやら、へパはローディアとも交流があるらしい。そんな彼女がそう会話を締めくくったことで、この話はここで終わった。終わった、というよりも、終わらせたと言った方が正しいけれど。
「んで、悩みは?」
「ちっ、忘れちゃいなかったか」
どうやら彼女としては、そちらの方が重要であったらしい。話を逸らしたかったハイリとしては、どうしてそこまで自分の悩みに執着するのか怖くなってきたところである。
ともあれ、答えの出ない悩みは抱えておくだけで負担になることは百も承知。袋小路に追い詰められたネズミが如く、彼は自らがここに来た経緯を含めて、霧のように曖昧だった自らの悩みを口にした。
村の生贄文化。そこから逃げ出し、追放された過去。そしてこの貿易都市に至り、二週間を過ごしたあれやこれやの津々浦々を、アルコールで希釈した意識で押し流した。
「なるほどねぇ」
バーの掛け時計の長針がゆっくりと巡り、ぐるりと四半刻を刻んだその語りを要約すると――
「今が嫌で村を出たかったくせに、いざ村から出てみれば、自分が何をしたかったのかわからなくなっちまったんだよ……それで、なんだか……自分が酷く情けなく思えたんだ……」
彼には目的がなかった。
いや、違う。『村を出る』という望みを叶えてしまったがために、自分が何をするべきなのかわからなくなってしまったのだ。
何しろ、彼にとって世界というモノは生まれた村で完結したものだったから。外の世界のことなど、祖父や父親が集めていた本の中に描かれた空物語に過ぎず、いざそこに足を踏み入れてみれば、その世界はあまりにも現実感に欠けていた。
そんな中、どんな形であれ自分と肩を並べる友がいた。いたはずだった。牢屋の中で全裸で邂逅するという最悪の初対面を迎えつつも、なんだかんだと騒いでいる間は、自分もこの世界の一人だと勘違いできた。
はずだったんだ。
「あいつらが憧れを持った瞬間、ここが自分の知らない世界だって気づいちまった。そうしたら、目に映る景色が本に書かれた絵みたいに色あせて……」
価値観が違うということは、世界が違うということだ。
少なくとも、憧れという価値観の違いを認識した瞬間に、彼は自分が……自分だけが間違っているような気分になった。
それに憧れる三人とも、それを引き合いに出した一人とも。
多数決によって、彼の価値観は否定されたのだ。
「その時からずっと、何をしていても、そんなことばっかり考えちまって……俺は何をしたらいいのか。どこに、向かえばいいのか……なんて、な」
刑期ともいえる一年を過ぎたら何をするのか。それまでにどう生きるのか。兵士になってもいいし、都市を去って旅に出るのもいいだろう。ただ、何をするにしても、必ずその疑問符は付きまとう。
――俺は何をすればいい?
真っ新なキャンバスへ無軌道に筆を走らせることなんてできやしない。思い付きだろうが性欲だろうが、描こうと思ったものがあるからこそ絵は出来上がるのだ。
ならば、描くべき先を見出すことができないハイリは、どんな絵を未来に描けばいい?
「そんなもの、例え目標があったとしても変わらんぞ」
沈むハイリに向けてそう言ったのは、人生の大先輩たる老人二人ではなく、職場の大先輩たるルビーだった。
「目標なんてものは呪いと変わらない。無心に走ったところで、抱いた道筋は間違いばかりで、どうすればそこにたどり着けるかなんて誰も教えてなんかくれない。そうしてるうちに、体も心も壊れてく……それでも、抱いた理想は捨てられないんだ。自分がどうなろうとな」
朱色に染まった頬を艶やかに撫でて頬杖をつく彼女は、吐き捨てるように語る。
「ハイリ」
「は、はい!」
ふと、ルビーが彼の名を呼んだ。教えた覚えもないのに、名前を呼ばれたことが嬉しくなって、ハイリの声は上ずってしまう。
そんなハイリの姿を見て、ルビーは微笑んだ。
「志など、本来はどうでもいいものだ。価値観や思想。或いは理性や損得なんて心で、目指すべき理想を決定しているはずなのに、それを目指そうとした時と今じゃ、そんな基準は百八十度変わってる。……それなのに、抱いた理想は変わらないんだ」
――誰もが憧れる大騎士になる。
そんな子供のころに抱いた夢を、今となっても抱き続ける彼女は言う。
「だからね。夢中になれるモノなんて、実はもっと心の奥の方にある何かが決めてるものなんじゃないかと私は思う。だって、そうでもしないと自分が壊れてまで目指そうなんて思いもしないだろう?」
子供のころの記憶なんて、多くのことが穴だらけ。それでも、その夢を抱いた時のことだけは鮮明に思い出せる。今となっても、共感できる。
それは、自分の中に確固たる思いがあるのだから。
「だから、きっとハイリにも見つかるはずだ。考えも感情も価値観もかなぐり捨てて、目指したいと思えるような何かが」
そこまで言い終えて一息ついた後に、グラスに残ったワインを彼女は一息に呑み干した。
「……まあ、私はそんな偉そうなことを言える立場じゃないけどさ」
そうしてほんのりと酔いが回ってくるのを感じながら、自分を恥じるルビーははにかむように笑うのだった。
「あのルビーが随分といっちょ前なことを言うようになったねぇ」
さて、そんな話を聞いていたへパは、しみじみとそんな言葉を零す。それと同時に、大きく振り上げた張り手で、バチンッと活を入れるようにハイリの背中を引っ叩いた。
「それじゃあ、しばらくは小僧の目標は、目標を見つけるってことさな!」
「痛ってぇぇええ!!」
「はははは! 痛いってさ! がはははははははは!!」
背中を叩かれ痛みに悶える姿を豪快に笑い飛ばすへパ。やはり老人は嫌いだと、ハイリはキッとへパを睨んだ。
「ま、迷うにしろ覚悟を決めるにしろ、警備隊は良い学び舎になるはずさな。なんたってあそこは、誰かを守る術を覚えることができる! いざという時に、守りたいものも守れないようじゃ、死んでも死にきれないだろう?」
「……まあ、確かにそうだな」
へパへは恨みばかりが募るハイリだが、へパの言葉には同意するしかなかった。ただ、この痛みばかりは同意できない。何をしてくれやがるのかと、嫌悪感のこもった眼を向けるばかりだ。
「少年」
「な、なんだ?」
「これは私から」
ふと、店主がハイリを呼んだかと思えば、テーブルへと一杯の酒を差し出した。
「何かあればここに来るといい。彼女らのように俺は先を示すことはできないが、酒は君のすべてを肯定してくれる」
「……ありがとうございます」
これが彼なりの励ましであることはすぐに分かった。だからこそ、ハイリは思う。
「俺の、やりたいこと……」
出された酒を飲んでから、彼はなんとかその答えを出そうと考えて、考えて――
「……巨乳の嫁さんが欲しい」
ちらりと、ルビーを見た。いや、ルビーというか、彼女の持つ豊満なそれを見た。
「巨っ……」
話の流れからは想像できない程に下品な言葉が出てきて虚を突かれたルビーは言葉を失いつつも、サッと胸元を両手で隠した。
「な、何を言っているんだ貴様は!」
「巨乳の嫁さんは男の夢っすよ! それにルビー隊長すごい美人なんですもん!」
「び、美人?」
「そうですよ! もうこれ以上ないほど美じ……――――ZZZ……」
はてさて、数十分前に見た覚えのある言い合いにまたもや発展するかと思われたその瞬間、ぱたりと糸が切れたようにハイリは卓上に突っ伏してしまった。
これには流石のルビーも、混乱する頭を差し置いて心配する。しかし、すぐに彼が酔いつぶれただけだと判明したことで、彼女の口からは大きなため息が漏れだした。
「まったく、何を言い出したかと思えば……それにしても、美人か」
「気になるのかい?」
「美人と言われて悪い気はしませんよ、へパさん。……まあ、同じ警備隊の仲間を、そういった目で見ることはできませんが」
悲しきかな。彼の知らぬところで、迂遠な告白はバッサリと切り捨てられてしまうのだった。
はてさて、そうして一人が酔いつぶれたところで、夜も遅いこともあって酒の席は解散という運びになった。
そして翌日。
初の飲酒を目覚めたハイリは、二日酔いという更なる初体験の中、酒を飲んだことが禁酒中の三人にバレ、拷問紛いの詰問をされることとなったが……それはまた別のお話だ。
―to be continued
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