第三章 地底の民
伝承1 ダキニア戦役 異伝
紀元一九八年夏。
我が帝国の東方から難民が押し寄せて来た。
彼らはダキニア及びアヴァリアの民で『東の果てにある山脈から襲来した蛮族から逃げてきた』と訴えた。
ウルピノス帝が元老院の招集すると、今後の動きを伝えた。
「地底の民は大陸の東方を荒らしまわり、殺戮を続けながら帝国領内を侵す勢いで向かっている。手をこまねいている時間はない。私は大軍を直接率いて蛮族を迎え撃つ」
皇帝直々の出陣となれば元老院議員らも見ているだけとはいかず、彼に従事し、戦場に赴く者が大勢いたと伝わっている。
紀元一九九年冬。
ウルピノス皇帝率いる十万の大軍は[以下数行欠損]……両勢力の損耗は激しく、地底の民は進軍を停止。
以降、皇帝ウルピ[欠損]チェル・カンは[以降数行欠落]この戦いにおいて、カンの軍勢は魔術を使った。
天から炎の矢を降り注がせ、帝国軍兵士の多数を殺した。
帝国の軍事力は著しく低下し、また帝国領内での蜂起が相次いだ。
同時に、帝国領内でクライツ教の信者が爆発的に増加。
人民は法王の『奇跡』を信じ、皇帝に代わる『世界の守護者にして真の支配者』と認めていった。
――『ラティニア帝国の歴史』 ガイウス・ドミティウス著 写本
注釈
傍点を付けられている箇所は、本著が記された時代の文法と合致していない。後世に加筆されたものと思われる。
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