第113話
ここはすでに戦場であることを思い出した。
自分は蚊帳の外に出され、首謀者であるベゼル様と平然と会話していた為に完全に油断していた。
倒れた衛兵達が視界に入る。
生存していると思われる者もいるが、即死だと推測される者もいる。
その中にウォレンの姿も確認できた。
――だが、近寄れなかった。
倒れてはいるが、生きてはいそうだ。
しかし、無事とは言えないだろう。
少なくとも右足は失われていた……。
僕は声を掛ける事も、容体を確認する事もせず、背を向けて走り出した。
これ以上、罪悪感を背負いたくない。
そもそもこの状況下で呆けていられたのも”罪悪感”への拒否反応があったのかもしれない。
責任を感じたくなかった。
だから”見て見ぬ振り”が出来た。
あくまで自分には関係の無い事象だと……。
だが、ウォレンの姿を見て、引き戻された。
考えてしまった――
僕がベゼル様を止めておけばとか、この状況になった段階で何か出来ることがあったのでは無いか?とか……。
それでも結局、ベゼル様には逆らえなかっただろう。
なるべくアルレ様から遠ざける為に。
だから僕はこうするしかなかった。
仕方なかったんだ。
「セルムさん!それは違います!!」
ガウェン様は怒号を上げる。
僕は俯いたまま足を止めた。
「……じゃあ、どうしろって言うんですか?」
「貴方も言っていたじゃないですか。静観すると」
「この状況をただ眺めていろと?……それこそ正気じゃない」
「では、今更この場から逃げ出して何をするのですか?何が出来るのですか?」
凛とした態度でガウェン様が問い掛けてくる。
返答に詰まる僕の方へ、ローブを纏った者が近づいてくる。
気が付き身構えた。
ローブを纏った者は立ち止まり、ゆっくりとフードを外す。
「今度は……ちゃんと……決着を着けよう」
そこにはトールスが立っていた。
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