第17話


 日が暮れかかる頃、区域内を簡単にだが、ほぼ一周回り終えた……っところで、魔道具が鳴動する。


 「はい、セルムです」

 『見つけたそうじゃ!!イの7じゃ!すぐに向かえ』


 慌てた様子で早口で話す王女。


 「!?本当ですか!?」


 早すぎる。

 本当にミレイは何者だ?いや、それどころではない。


 『今、ミレイが監視しておる。早急に向かうのじゃ、早急にじゃぞっ!!』


 僕は地図を確認しながら対象座標を辿る。

 今、真偽を確かめるのは得策ではない。

 こちらには何も有力情報が無い、信じてみても失策とは言えない。

 それに、あのミレイからの情報だ、まったくの虚偽という事は無いだろう。


 「分かりました。イの7ですね。ミレイには絶対に動かないように伝えておいて下さいね」

 『分かっておるわっ!!』

 「すぐに向かいます」


 そう言って、通信を切り、拠点にいるウォレンの元に向かった。

 確証は無い為、少数精鋭をお願いしよう。



  ◇  ◇  ◇



 ウォレンを探し、仮拠点のテント群の中で一際大きなテントに入る。

 中では、ウォレンと他数名がテーブルを囲み会議をしていた。

 第一王子直属の親衛隊隊員という事で、ウォレンはそこらの一般兵とは格が違う。

 所属は違うが、軍で言えば大隊長と同等の権限を持つ。


 「ファーネル様。ご報告が!」

 「なんだ?」


 友人とはいえ、他の兵の目もある為、互いの立場をわきまえた振る舞いで応対する。

 僕は変装してるし。


 「不審な者達が居るとの情報が、たった今入りました」

 「勇者か?」

 「勇者であるという確証はありませんが、可能性はあるかと……」

 「場所は?」

 「この場所です」


 と、地図を開き、ウォレンに近付き指差す。

 近付きざまに、他に聞こえぬよう、小声で尋ねた。


 「騎竜を一騎貸してくれ。同僚が心配だから、僕は先に向かう」

 「ああ、かまわねぇ、表のやつを使え。というか、ガセじゃ無いよな?」


 ウォレンも小声で答えた。


 「確証は無いけど、それなりの信憑性はある。だから、すぐに来てくれ」

 「分かった」


 会話を終えた僕は、ウォレンから離れる。


 「情報の真偽を確かめる為、この場所に兵を送る。お前は先に周辺の整備をしておけ」


 ウォレンは立ち上がり、他の兵に聞こえるように言った。


 「はい。承知しました」


 僕は跪きウォレンに頭を下げる。



  ◇  ◇  ◇



 僕は急ぎ足でテントを出て、外に繋がれた騎竜に跨る。

 騎竜の扱いは軍に入りたての頃に習ったが、それ以降乗ることは無かった。

 どうにか動かす事には成功した。


 ……が、凄まじい加速をしていく騎竜。

 気を失いそうになりながら、しがみ付く様に、必死で方向指示を出した。

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