第15話


 一時間程くだらない計画を聞かされた後、僕は王女の部屋を出た。

 扉を閉め、大きく溜息を吐き、歩き始めると――


 「いつから緑色の髪になったんだ?」


 急に話し掛けられ、声の方へ振り返る。


 「まさか、ずっと待ってたのか?」


 やや引き気味に答えた。


 答えた先には、壁に寄りかかる姿勢で腕を組み、格好を付ける男性が居た。

 リオン様の親衛隊隊員であり、僕の数少ない友人のウォレン・ファーネルだ。

 高等習院時代の友人であり親友の一人。


 「そりゃそうだ。遭いに来たんだし」

 「それにしたって、結構な時間が経ってた筈だ」

 「だから、結構な時間待ってたんだ」

 「で?……誰?」

 「って、え!?俺だ!ウォレンっ!!」


 驚いた表情で訴えかけながら近付いてくるウォレン。


 「あー、冗談、冗談だよ。うざったいから近寄るなって」


 僕は腕で振り払うような動作をしながら言った。

 彼は筋肉質で長身の為、近寄られるとうざい。


 「分かってんならもう少し対応の仕方があるだろ!嬉しそうにするとかさ」

 「嬉しそうねぇ……。そんなに久々って訳でもないし、心境的には微妙だし」

 「何でだよ?」

 「分かるだろ?さっきの三文芝居もだけど……あんな事件があって、僕はアルレ様の従者、お前はリオン様の親衛隊隊員。その差を少し気にしたりはするんだよ」

 「んなの気にすんなよ。そんなに変わらないだろ?それに、無罪だったんだし」

 「そうは言ってもね。冤罪になった理由も曖昧じゃあ、正直、胸張って言えない」

 「……何か、思い当たる事があるのか?」

 「無いよ。だから余計に気持ち悪い」

 「……あの時、何の力にもなれず、すまん……」


 悔しそうに俯くウォレン。

 彼は彼なりに僕を救おうとしてくれていたのかもしれない。

 しかし、彼にも彼の立場がある。

 仕方が無い事なのだ。


 「気にしてないよ。結果は無罪だったわけだし」

 「だが……」

 「まぁ、それは置いておいて、今回の件、指揮をウォレンが執るのは助かった」

 「何でだよ?」

 「この髪見ても分かるだろ?なるべく正体がバレないようにしたい」


 僕はカツラを外して見せた。


 「分かってると思うが。それ、重罪だぞ?」

 「アルレ様の命令だし、リオン様も了承済みだって聞いてるよ。それに今更、その程度の罪に怯えるのも馬鹿馬鹿しい」

 「その程度ってな……。ったく、本当に分からねぇよ、お前は」

 「その程度だよ。で、それよりももっと面倒な事に、力を貸して欲しいんだ」

 「珍しいな。お前が頼み事なんて」

 「実はさ……」

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