第2話


 僕等が生活している、デアラブル王国。


 この国は国外の者からは魔人国とも呼ばれ、国民はほぼ皆、魔人族と呼称される種族だ。

 王は国外では魔王と呼ばれている。


 総人口は、1億人程度。

 そこだけ聞けば多く感じるが、最も多い種族である人族と比べると、魔人は20分の1程度。

 対照的に超少数のエルフという種族もいる。

 100万人くらいしか居ないらしい。


 その他にも、各々が勝手に種族と掲げていたり、種族を持たないと言い張る者達も存在しているが……。



 そして、このデアラブルは単一国としては世界最大の国土と人口を誇っている。

 その理由としては、人族は同種族内で国を細分化するからだ。

 対して魔人には国が一つしか存在しない。

 はぐれ魔人も存在するとは思うが、大抵は国内に居るだろう。


 そして、何故僕等が魔人などと呼ばれているのか。

 ”魔”などという形容が付いてしまっている為、凶悪なイメージが先行してしまうが、実際は人族とさほど変わり無い。

 気性の面だけでなく、生理現象もあまり変わらない。

 若干、外見や能力に特徴は現れるが……。


 そういった意味では、”魔”人などと呼ばれている事に不服と差別は感じている。

 能力による”魔”なのか、邪な者の”魔”なのか確かな事は分からない。


 そして、その魔人も幾つかの種類に分けられている。



 第一に異能型。


 人族と造形上では、さほど変わりは無いが、髪の色、瞳の色、肌の色に特徴が現れる。

 人族は髪や瞳の色が黒を基本とし、肌に関しては人肌色という呼称が一般化している。

 が、これは偏見でないかと論議の対象にもなっている。


 対して、異能型魔人は髪が赤だったり、青だったり、緑だったりと様々。

 瞳も同様。肌の色は人肌色をしている者が多いが、一部変わった色をしている者もいる。

 歴史的には、外見では無く能力的部分の差で種族を分けていたという。

 それは魔力と呼ばれる異能の力。

 人族の中にも持つ者が居るらしいのだが、圧倒的に少なくて力も弱い。

 とはいえ、魔人族の魔力も、さほど強力なものでは無く、それのみで武力と言える程に強力なものは極々稀だ。

 例を挙げれば、何も無いところに小さな火種を起こしたり、少し離れた軽量な物を僅かに動かしたり、もの凄く簡単な思考操作を行えたりという程度が一般的。

 根本的な力は大した事は無いが、特殊な資源を使ったり、学術的工夫を施したりして、効力を増幅させ生活の中にも利用している。

 それらを、魔道具と呼んだり、魔術と呼んでいる。

 魔人の中にも魔力を全く使えない者や、逆に異常な程に強力な魔力を有している例外も存在……している。

 前述の事を踏まえ、現在では、外見や能力では無く、生まれた場所や親族で種族を分けられるのが常識となっている。


 第二に獣人型。


 その名の通り、獣の特徴を体の一部に有している者の事を指す。

 顔や体系まで、ほぼ獣な者から、耳や、角、牙等、僅かに獣の特徴が出ているだけの者と様々だ。

 一般的には身体能力が人族のそれを大きく凌いでいる。

 やや思考が短絡的である者が多い気はする(独断と偏見はあるが……)。

 起源については諸説あり、現在でも論議の対象になっている。

 結果として、現在では魔人の一種として定義されている。


 第三にハイブリッド型。


 呼び名の通り、前述二種の魔人の交配により生まれた者達だ。

 多様な能力を併せ持つ強力な存在にも見えるが、どちらの能力もオリジナルよりも劣るという欠点もある。

 あくまで魔人同士の交配での呼称で、他種族交配の場合ではハーフとか混血と呼ばれている。

 当然ハーフの親のどちらかは別種なのだが、現在では準魔人属として永住権を与えられている。


 と、ここまでが魔人族として定義されている。

 とはいえ前述の通り、区切りは特性でなく、主に出自で決まるのが現代の主流。

 魔人と定義されているのに、魔力を全く使えない異能型が存在するのがその証拠だ。


 学術的な見解では、人族の突然変異が異能型魔人、人族と獣の交配種が獣人型魔人という説が有力視されている。

 あくまで仮説で、いまだ結論は出ていない。


 能力を持ったが為、人族から弾劾されたか、選民意識を持ち自ら離れたかの理由により、寄る辺を求めた結果として出来た国がデアラブルだとも言われている。


 その為か、習慣的に同族内での子孫繁栄が一般的であり、その歴史が長い為、外見的な特徴や能力に拍車が掛かったのだと思う。


 互いに伝わっている伝承のせいもあり、人族との関係性は良好とは言い難い。

 歴史的には大きな戦乱が幾度も起き、その都度、互いに大きな被害を出しながらも、決着には至らなかった。

 いくら魔人側が能力的に勝っているとはいえ、数的不利を覆すのは難しかったという事だろう。


 現在では名目上、共存共栄を掲げ、不可侵協定を結んでいる。


 しかしながら、魔人族の一部では選民意識を持ち他種族を下に見ている者も居る。

 同時に、人族は魔人を蛮族とみなし、嫌悪しているという風潮もある。

 結果、仮初の平和でしか無い。


 事実、小競り合いは尽きない。

 本来ならば和解の象徴とも言える、魔人と人族のハーフも存在するのだが、両国内では差別や偏見の対象ともなっている。


 僕は純血の魔人なのだが、どういうわけか、かなり人族寄りの見た目をしている。

 黒い瞳・黒髪・人肌色と外見上完全に人族だ。

 両親も人族に近い部分はあったが、その人族に近い部分を色濃く受け継いでしまったようだ。

 それ故に、幼い頃は様々な苦渋を味わった。

 その劣等感から、必死に努力し王国軍本部への道を切り開いたのだ……ったが。



 色々あって今は、菓子と飲み物の買出しに奔走している……。

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