僕が魔神と呼ばれるようになった理由
麻田 雄
第1話
けたたましい鳴動音を上げる掌大の石板。
僕、セルム・パーンの朝は枕元の通信用魔道具で始まった。
寝具に包まったまま、手だけ出し、魔道具を取る。
耳元に当て「はい、わかりました」と、応答した後、渋々寝具から抜け出し体を起こす。
今日もこちらの都合など一切考えない呼び出しで目を覚ます、まったく心地の好い朝だ。
支度を整え急ぎ足で家を出た。
◇ ◇ ◇
雑然とした街中を抜け、他の場所とは明らかに違う、やや威圧感のある巨大な城へと向かう。
排他的で堅牢そうな城門の前には、守衛が二人。
二人共、いつも通りの愛想の無い鉄面皮。
僕が挨拶をすると、無言のまま一人が門を開け、僕は中へ入る。
この中に僕の職場はある。
外観の威圧感とは裏腹に、城内は小綺麗で人も多い。
すれ違う城内の人々に軽く会釈をしながら、職場へ急ぐ。
三階まで昇り、職場の前で立ち止まり、呼吸を整え、不規則にノックを3回。
「よし、入れ」と、中から声がした後にドアを開ける。
「おはようございます。アルレ様」
僕はドアを開けた後、頭を下げる。
「遅いぞ!セルム!妾の菓子が切れておる!」
怒りながら、空になった菓子の袋を逆さに持ってアピールしている少女が僕の主人、この国の第二王女アルレ様だ。
そう、僕は王女の従者……もとい、パシリをしています。
「まさか、その菓子一つの為にこんなに朝早く起こされたんですか?」
「そうじゃ!仕事じゃろう?」
「仕事ねぇ……」
「なんじゃ?不服か?」
「……いえいえ、で、菓子を買ってくればいいんですか?」
「うむ」
「なら、最初にそう伝えてくれれば早かったのでは?」
「ん……そうじゃな……。まぁ細かい事は良い、今すぐ買ってまいれ」
「あぁ……はい」
僕は不本意丸出しの表情で応え、気怠そうに部屋を出ようとする。
「ついでに発泡飲料もな」
飲み物の追加注文が入った。
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