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こうして、君はこの街の住人になった。
事の顛末を見届けるために教会の一室に下宿させてもらっていたのだが、結局、そこで暮らすようになっている。
今の仕事はマリアを手伝って子供達の面倒を見ること。そして‥‥
「組長がまた来たぜ」
洗濯物を干している君へスターアローが告げに来た。
その後ろにいるのは、着流しに刀をさげた、貫禄のある三十代の男だ。本人が名乗らなかったらとてもわからない‥‥これがかつて老人であり、今や若返ったフォアマだとは。
彼に呼ばれる度、君は用心棒の「先生」として顔を出している。
この街に荒事は尽きない。はっきり言って治安が悪い。君がこれまで見て来た人里ではかなり下の方だ。複数の組織がいつも縄張り争いで睨み合っているし、末端のチンピラまでは統制しきれずにいつもどこかでケンカ騒ぎがある。
自治会長とはいえマフィアの組の長でもあるフォアマに、
君の名を聞くと逃げる者の方が多いぐらいには、すぐに名が通った。
今度も何かの商談に君を連れて行くのだろうが‥‥若返ったフォアマは、落ち着きなく周囲を見渡している。
スターアローが呆れ半分に言った。
「マリアなら買い物に出かけてるぜ。人もつけずに自分が来るとか、あの
「そういう言い方は無しにしてもらおうかい!」
聞いた所では、フォアマが子供の頃にも、シスター一人でここを支えていた時期があったらしい。その時に世話になった女性にマリアを重ねて見ているのだろうか‥‥?
「いっそ足を洗ってここで働けばどうだ、組長」
スターアローの提案に、しかしフォアマは厳しい顔を見せる。
「そうはいかねぇ。これでも俺が頭になって抑えつけているんで、だいぶマシにはなったんだ。昔はそりゃあ酷いもんだった。まぁあんたらみたいな英雄から見れば、田舎ヤクザの御託だろうが‥‥」
そう言うフォアマの目は遠い所を見ていた。
しかしその目の焦点が君達へと向く。
「俺はまだまだ倒れるわけにゃいかねぇ。だからまた一仕事頼みにきた。といっても、あんたのおかげで俺の周りもだいぶ安全になっているし、これからはそう頻繁に声はかけねぇだろう。そうなると、あんたみたいな英雄殿はまた冒険の旅に出なさるかね?」
フォアマの目つきは、探るような、窺うような物だった。
「仕事が減るなら仕方ないよな。またどこかで一稼ぎしてくるか」
スターアローが言うと――
「あら‥‥それは困りました。お二人とも、すごく頼りにしていますのに」
子供達を連れて、いつのまにやら帰っていたマリアが弱った顔を見せていた。
今では彼女も子供達も、君とスターアローを家族同然に扱ってくれているのだ。
「留守を任せられる奴がいればいいんだが。なかなか意固地なんだよなぁ」
スターアローがどこか茶化すように言う。
その横でフォアマがそっぽを向いて「フン」と鼻を鳴らしていた。
【fin】
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