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こうして君達は城に召し抱えられ、騎士団に入れられる事になった。
手柄を立てての入団でもあり、いきなり副団長からの開始である。騎士団長は既に高齢なので、実際に部隊を率いるのは君に任される事が多かった。
当初は成り上がりの余所者に不信感をもっていた騎士達も、共に行動して君の腕を見ているうちに認めざるをえなくなり‥‥山賊、ゴブリンの群れ、オークの武装団、闇エルフの襲撃隊など、そんな領内のならず者どもを征伐しているうちに、
その日の報告を終え、君は城の厩へ向かった。だが中にスターアローはおらず、馬番はいつもの事といった顔で上を指さす。
空を見ると‥‥ミナーヴァ姫を乗せた
ドレスをひるがえしてひらりと跳び下りるミナーヴァ姫。
「あー、久しぶりにスッとしたわ。空を飛べるってやっぱりいいわね」
「城に帰ってきたら、こいつよりミナの方がいっぱい乗ってんな」
君と姫を交互に見ながらスターアローが呆れた声を出す。この
なお呆れはしても、乗られる事に文句も断る気も無いのは君にもわかっている。
姫は上機嫌で君に笑いかけた。
「なら二人で乗る?」
「そりゃ乗せられるけど、重たいって」
流石にスターアローは抗議する。
だがそんな
「あらま。これからまだ増えるのに」
そして今度は君へと。
「私達の子供も乗るでしょうしね? 次の王様」
言われた君は戸惑う。
この姫を娶って、小国とはいえ王になる。それは風来坊だった君にとって最上であろう出世だが‥‥
「ミナの兄さん方は戻らないのか?」
君の気がかりを、スターアローが口にした。
それを訊かれたミナーヴァ姫は、ほんの少し寂しそうな、しかし嬉しそうで穏やかな微笑みを見せる。
「環境が変わったのが良かったのかしら。なんか心を入れ替えて真面目になったし、引っ越し先の領地を継ぐみたいよ? ま、父もそれを見越して、婿養子を探している所に行かせたみたいだけど」
「いろいろ収まるように考えてはいたわけか。王様ともなると大変だな」
感心するスターアロー。
ミナ姫の笑顔が、また茶目っ気たっぷりな物になり、君へずいっと顔を寄せる。
「大変よ~。覚悟してね」
「ミナの親父さんはそれで納得してるのか?」
スターアローが再び訊くと、姫は勢いよく頷いた。
「そりゃあ自分と娘の命の恩人だし、英雄としての名声も十分だし、この国に馴染むためにこうして騎士団員もやってるわけだし。もちろんこの先ずっと順風満帆とは行かないでしょうけど、そこはそれ。夫婦とスターアローと子供達と‥‥家族の力を合わせてドンと行きましょう!」
「まぁ、お前さんらの子供なら滅茶苦茶タフだろうしな。それも加えて一丸となればそりゃ怖いもんはねぇわ」
呆れ半分に納得するスターアロー。
姫はわざとらしく君にもたれかかる。
「何人欲しい? ん?」
これは確かに大変だ。
先は色々思いやられるが‥‥その割には、自分にも笑顔が浮かぶのを抑えられなかった。
【fin】
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