137
君はこの報酬を受け取る事にした。
しかしスターアローには懸念があるようだ。
「学院長のラファエロは、若返りだの死者蘇生だのが薬や道具でできるようになると思っているようだが‥‥そんな事が実現したら、人間が溢れかえって面倒な事になったりしないのか?」
そう言われると気にならない事もない。それらは高度な魔法でのみ可能だったから、大多数の人間には無関係だった。それが道具でできるようになると、どうなるか?
その結果は‥‥
――数年後――
「我らが勇者、
君達の住居に訊ねて来た学院長ラファエロは、毎度のごとく君に依頼をもってきた。
そんな彼にスターアローが訊ねる。
「で、必要な素材はどこに行けば手に入るんだ? 海の向こうか地の果てか? よくもまぁ、伝説級の探索行をしょっちゅう持ち込んでくるもんだぜ」
君が
しかし研究に使ってしまったので、
伝説の秘宝の代わりになる物など、やはり伝説級に近い貴重品ばかりなのだ。
結局、人為的に大いなる奇跡を起こせるようになっても、そうそうホイホイと起こせるわけもなかった。かつてのスターアローの心配は杞憂だったと言える。
問題は、人為的な奇跡の実行自体はできること。
藁にもすがる思いでこのカイコウへ来る者は常にいること。
そして必要な探索をクリアできる者などそうはいないので、常に君に依頼が来る事だ。そして君が未知への旅を断るわけもないので、伝説級の探索行へ頻繁に出かけている。
「秘宝と呼ばれる品なんて、普通の人間なら一生に一度見るかどうかだってのに。そろそろ見飽きるなんて俺達ぐらいのもんだ。何が護衛業は別に発注する、だよ‥‥そんなもん数えるほどしかした事ねーぞ」
呆れるスターアローに、ラファエロは「フッ‥‥」と微笑んだ。
「辞退は自由です。あなた達に断られると、代わりなんて大陸中探しても見つかるかどうかわかりませんがね」
酷い話もあったものだ。
まぁ相応の報酬は手に入るので、もう自分の財産がどのぐらいあるか、村ぐらいならいくつ買えるのか、物置に魔剣や聖剣が何本あるか、君自身が把握できていないのだが。
そして名声の方は――
「いつも通り、道中で何があったかは詳しく記録してください。僅か数年であなたの伝記は、今後百年は誰にも超えられない域に達しています。引退までに千年は超えられない勇者を目指しましょう」
笑うラファエロ。
スターアローはますます呆れるのだった。
「伝説の品を発掘し過ぎて自分達が生きている伝説になるなんて笑い話だぜ」
「さあ、これが大地の蘇生に必要な【ガイアの髪】を手にするための地図です。
そう言って地図を手渡すラファエロ。
苦笑しつつ君はそれを受け取り――次の冒険に向かう事を決めた。
【fin】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます