31
君達は大神殿へ案内された。
歩きながら街中を見たが、やはり僧服の者が他の街より多い。そしてそれ以上に、ケガや病を抱えた者が。
この一帯随一の治療技術に頼って街に来た患者達なのだろう。
大神殿に着くと、君達は奥の部屋まで通された‥‥スターアローも共に。大神殿の中央を通る廊下は、馬がいても楽に通れる広さだったのだ。
そして君達は大神殿の最も大きな部屋を通り抜ける。
室内に大きな池が設けられ、その中央には血のように赤い葉をつけた木が立っている。
その池のほとりには多数のケガ人や病人がいて、池の水を飲んだり患部にかけたりしていた。
その光景を見て驚く君達に、案内の僧侶が誇らしげ語る。
「サクレッドの誇る癒しの木だ。周囲の水に薬効を与え、何百年もの間に数えきれない人々を救っている。無論われら神官も人々を治療しているが、あの聖なる木があるおかげで救える人は倍にもそれ以上にもなっているのだ。おそらくあれも
そう語ると、僧侶の顔がなぜか陰る。
「さあ、我らの主はこちらだ」
そう言って君をさらに奥へ案内する。
おそらく神殿の中央であろう部屋もまた広く、サクレッド教団の神を祭る祭壇がある。
その祭壇の前で、後ろに数人の御付きを立たせ、青と白のローブを纏った小柄な神官が祈りを捧げていた。
君達が入ると神官が振り向く。
小さな人物だったがそれも当然、まだ十代半ばの少女だったのだ。
彼女は背筋を伸ばして君達の前に立つ。
長い銀髪を束ねた白い肌の少女‥‥その翠の瞳は深く澄んでいて、まるで波一つ立たない泉のようだ。
「
彼女の厳かな声は、傷の無いガラスを思わせる綺麗なものだが、上から下へ向けて話しかける響きがあった。
(挿絵)
https://kakuyomu.jp/users/matutomoken/news/16818093077630666571
「おいおい、まだ雇い主になってもらったわけじゃないぜ。ちと気が早いんじゃないのか」
そう言うスターアローは彼女の態度への不満がにじみ出ていた。
「いかな力を持っていようと、世のため人のためにならぬでは誇れる物ではありません。自分達が働く場はよく考える事です」
そう答える彼女の声は落ち着いており、不動の意思を含んでいた。
そして彼女は言いたい事を言うと、背を向けて部屋を出て行ってしまった。
呆気にとられる君達に、彼女の付き人の一人が残って話しかける。
「後の商談は私がする。
この都市を取引相手に選ぶなら――
https://kakuyomu.jp/works/16818093075655425577/episodes/16818093075665603666
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