第1話 10年後

「起きろ! ヨルン」

怒りがこもったような声が部屋に響く。遅れて誰かがベッドから転がり落ちる音が続く。

「あいかわらずバカでかい声だなー」

そう呟きながらヨルンと呼ばれた青年は、目をこすりながら気怠そうに起き上る。

「お前がいつもちゃんと起きたら俺も朝からでかい声を出さなくてすむんだよ!」

そう言って、腕をくみながらヨルンを睨む青年。鼻息荒く今にもヨルンに殴りかかりそうな様子である。

「はいはい。 気を付けますよ、ジェラルド君」

ひらひらと手を振りながら、大きなあくびをかますヨルン。そんな反省の色がうかがえないヨルンの姿についに堪忍袋の緒が切れたのだろうか。ジェラルドがヨルンにつかみかかった。

しかし、その手は空を切った。同時にジェラルドの体が床に打ちつけられる。痛そうに腰をさするジェラルドにヨルンは呆れたように言った。

「大丈夫か?」

見下されていると思っているのか、ジェラルドは悔しそうにまたヨルンも睨みつける。

と、その時鳥の鳴き声のように甲高い音が鳴った。二人はその音を聞くや顔を見合わせる。そして、我先にと部屋を飛び出した。

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