プロローグ 2

2人がしばらく歩いていると、藪をぬけ開けた場所にでた。

雪が月明りを反射し森の中とはうって変わって明るいその場所に、墓石のようなものが二つ並んでいる。手入れもろくにされていないのか石はボロボロでかろうじて文字が読めるかという状態である。

少女と少年は墓石の近くまでよると、祈りのためにだろうか手を合わせた。

わずかな静寂の後、少年が呟いた。

「なんだろう。アレ」

少年が指さした先で、雪の反射とは異なる暖炉の火のような色合いの光が瞬いている。

「ヨルン! ここにいて!」

少女は吐き捨てるように言うと、少年が指し示した方向に走り出した。

「姉さん!?」

ヨルンと呼ばれた少年が振り返る。しかし、そこに姉の姿はない。

来た時の速度とは比べられないほどの勢いで疾駆する少女。藪で頬を切ってもその足は止まらない。

少女が駆ける音を聞きながら、ヨルンは呆然としていた。

 

―――これが姉を見る最後の機会だということを、ヨルンは知るよしもなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る