魔女の虜囚

小鳩

プロローグ

雪が獣たちの眠りを妨げないようにと、静かに降る。そんな静寂に包まれた森の中に子供が二人。

「姉さん。もう帰ろうよー」

少年は寒さでかじかんだ手をさすりながら、雪に覆われた藪をかきわけながら進む少女を促す。

「えー。あと少し我慢できない?」

少女は少年には目もくれずに言い放った。

止まる様子のない姉を見てか、少年はついに泣き出してしまった。

少女は泣き声を聞いてようやく振り返った。

またか、という様子でため息をつく。

「ほら、男の子なんだから泣くな」

そう言いながら少女は少年の頭を撫でる。

「お父さんとお母さんにあいさつするんでしょ?」

少女が優しく語りかける。その時、少年はそう言って笑いかける少女をにらみつけた。

「ただの石にあいさつしても意味ないじゃん!」

怒鳴りつける少年。しかし、少女は笑顔を崩さずに言った。

「いつかヨルンにもわかる時がくるよ」

そして、少女は少年の手をとり先ほどと同じように森の奥へと歩いていった。

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