第28話 お宝発見?
島民のひとりが発見した謎の石。
俺はそいつに見覚えがあった。
「魔鉱石か……」
魔鉱石とは、魔力を含んだ鉱石の総称である。
使い方次第では魔法を使えるほどの魔力を持たない者でも、魔法使いに匹敵するだけの力を得られる――と、されてはいるが、正直、本家の魔法使いとではたとえ魔鉱石を用いたとしても勝てはしないだろうな。
或いは、よほど上質な物であったら話は別だが……その別の話が目の前に転がっているのだから驚いた。
そいつを詳しく調べてみようと手を伸ばすと、
「お、おい、素手で触って大丈夫なのか?」
オデルゴさんが顔を強張らせながら言う。
よく見ると、他の島民たちも同じような顔をしていた。
彼らにとって、魔鉱石なんて物は初めて見るんだろうな。
大陸側では生活必需品のひとつとして重宝されている代物――待てよ。ということは、ここに落ちている魔鉱石はどこから来たんだ?
とりあえず、みんなには危険な物ではないと説明してから手に取ってみる。
「加工された形跡がない……原石のままか」
かつてこの島に流れ着いた者が落としていった可能性も考慮したが、加工されていない原石を持ち歩くヤツなんてそうそういないだろう。
あと、この辺りには例のモンスターの影響で島民たちは長年にわたって足を踏み入れていない。だとしたら、こいつは島にある天然の魔鉱石ってことか?
「この島に魔鉱石の鉱脈があるとなったら……大騒ぎになるな」
大陸側ではそれが原因で戦争が起こったりするからな。
魔鉱石の鉱脈っていうのはかなり大規模な物が多く、国境をまたいで存在しているところも多いため、トラブルのもとになりやすいのだ。
しかし、この島にある山のどこに鉱脈があるとするなら、この島の実質的な所有者であるハドルストン家が利益を独占できる。
エミリー様はそういったことに無頓着そうだが……現当主はそうもいかないだろうな。
常に相手の上を目指してマウントを取り合っているような連中だ。
莫大な利益を生みだす可能性の高い魔鉱石の鉱脈を放っておくはずがない。
だからと言って、みすみす放置しておくのもなぁ。
もし鉱山が存在しているとなったら、島の人たちの生活も一変するだろうし。
とにかく、俺はこの石の存在と希少性についてオデルゴさんたちに説明する。
魔法とは無縁の生活を送ってきた彼らには、やはりこの石の価値に関してピンときてはいなかった。
そりゃあ、魔法なんてなくても快適に暮らしているのだから、生活の補助と言われても思い浮かびにくいのだろう。
あとはエミリー様にも相談しないとな。
ここでの対応は島の未来を左右する重要な決定となりそうだし。
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