第29話 お嬢様への報告
ラゴン島で発見された魔鉱石。
日頃からこいつのお世話になっている俺は、あれほど大きなサイズの原石が道端に落ちていたという衝撃の事実に震えたが、馴染みのない島民たちからすると「ちょっと色が違う石」という認識しかもたれていなかった。
大陸で暮らしていたエミリー様や屋敷の人たちならこの凄さが分かるだろうと思い、俺は一旦森から出て報告に向かった。
「おや? ジャック様?」
「血相を変えてどうされたのかしら?」
到着すると、ちょうどダバラさんとケリスさんが談笑している最中だった。
俺は早速持ち帰った魔鉱石の原石をふたりへと見せる。
「石? ちょっと変わった色をしていますね」
「宝石というわけではなさそうですが、これは一体なんです?」
「魔鉱石の原石です」
「「…………」」
しばしの沈黙の後、
「「えええええええええええええええええええええええええええっ!?」」
ふたりの紳士淑女は大絶叫。
島中に響き渡りそうな声量だった。
おかげで屋敷中の人たちが何事かと出てきちゃったじゃないか。
「こ、これが魔鉱石!?」
「これほどのサイズを見るのは初めてですね……」
「加工される前ですからね。ただ、こいつが見つかったとなったら、ハドルストン家の当主様にご連絡をすべきではと思いまして」
「「っ!?」」
俺の言葉を受けて、ふたりの顔が強張る。
変なことを言ったつもりはないが、やけに緊張感が漂っている……本家とはあまりかかわりを持ちたくないのか?
硬直するふたりの背後から、
「ご苦労様です、ジャックさん。お話の続きはお部屋で聞きますね」
エミリーお嬢様が屋敷から出てきてそう告げた。
「お、お嬢様……」
何か言いたげなダバラさんに対し、エミリー様は柔和な微笑み浮かべながら頷いた。
これはやはり、本家との間で何かあったようだな。
彼女は療養のためにこの島へきているという話だったが……以前、俺がその辺の事情を詳しく聞こうとした際、ダバラさんは言葉を濁していた。
なので、仲がよくないというのは大体察してはいたのだが、まさかここまでとは思わなかったな。
下手したら追放されてきたって言いだしそうな空気だぞ。
「どうぞお入りください、ジャックさん。……大陸からこの島に移り住んだあなたになら事情を話しても大丈夫そうですし」
「じ、事情?」
それが果たして何を意味しているのか。
まったく予想はできないが、お嬢様の瞳には覚悟の色がうかがえる。
もしかしたら、これまでの事情を全部話してくれるのかもしれないな。
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