第24話 出会い
エミリーお嬢様を連れて森の中を進んでいく。
最初は俺ひとりだけだったのだが、結局、お屋敷の使用人たちのほとんどが同行することになって大行列ができていた。
しばらく歩いていると、アカツキの姿が見えてきた――が、
「ひっ!?」
最初に彼の姿を目にしたメイドさんが恐怖のあまりそんな声を出す。その不安は徐々に周りへと拡散していき、なんとも言えない空気が現場に流れ始めていた。
おまけにアカツキの横には倒した猪型モンスターが横たわっている。
これもまたみんなに悪い印象を与える要因となってしまっていた。
――しかし、エミリーお嬢様はたじろぐことさえせず、真っ直ぐにアカツキへと向かっていった。
使用人たちの制止を振り切り、ついにわずか一メートルほどの距離にまで達する。
すると、ここまで静観していたアカツキが口を開いた。
「俺の姿を見て怯みもしないとは、なかなか勇気のあるお嬢さんだ」
アカツキの声を耳にして驚愕する使用人たち。
一応、彼が話せることは事前に通達済みであったのだが、実際にこうして目の当たりにするとまた違った衝撃があるのだろうな。
ただ、それでもエミリー様に動じる様子は見られない。
「あなたからは一切の敵意を感じません。怯えるようなことなんてありませんもの」
「はっはっはっ! そこまで読み取れるとはまいったよ!」
堂々としたエミリー様の態度に、アカツキは笑いだしてしまう。
一方、使用人たちはヒヤヒヤしていた。
あの大きな体でお嬢様にのしかかりでもしたらと危惧しているようだが、恐怖で足が動かない様子。鍛錬を積んだ兵士ならともかく、平和なこの島で暮らしている者たちにとっては無縁の覚悟……とはいえ、実際に何かあったら飛びかかるのだろうけど。
――だけど、そんな心配はいらない。
そのうち、アカツキとエミリー様は談笑を始めた。
まるで古くからの友人のように、ひとりと一匹は楽しげに話し込んでいる。
「……どうやら、我々の心配は杞憂だったようですな」
甲冑まで着込んで完全武装しているダバラさんが言う。
とりあえず、アカツキの件は誤解というのが伝わったようで何よりだ。
その後、仕留めた猪型モンスターの回収を村の男たちに依頼。
久しぶりの肉にみんな興奮していて、今日もまた大宴会を開くと意気込んでいた。
ちなみに、この宴会にはエミリー様やアカツキも参加予定。
今回の件を通して、アカツキだけでなくお嬢様も島民たちとの距離が一気に縮んだような気がしたよ。
もちろん、俺もティノも全力で宴会を楽しんだけどね。
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