第23話 お嬢様、元気になる
屋敷へと通された俺は、ついさっき起きた出来事をエミリー様へ報告。
やはり、島民たちが目撃していたのはアカツキだったらしく、特徴が一致する――が、本当に脅威だったのは猪型のモンスターであったことが判明すると状況は一変した。
「そのようなことが……」
「島の人たちが恐れていたアカツキは話の分かるヤツで、実際、俺が猪型モンスターに襲われている時に助けてくれました」
これには一緒に話を聞いていた使用人たちもざわつく。
まあ、アカツキの見た目のインパクトは強いからなぁ……それに、妖狐ってたぶん大陸側の人でもそうそうお目にかかれる存在じゃないし、下手をしたら名前すら知らないって人も結構いるんじゃないか?
ただ、彼はとても賢く、人間に友好的だと告げたら、
「では、私が会いに行ってみます」
エミリー様が突然とんでもないことを言いだした。
「お、お嬢様!?」
「それは危険すぎます!」
ダバラさんとケリスさんが大慌てで止めに入る。
俺としてはお嬢様に来てもらっても問題はないと考えているが……さすがに良家のお嬢様だから、そこは慎重になって当然だ。
しかし、もうエミリー様は止まりそうにない。
「大丈夫よ、ふたりとも。ジャックさんだってそのアカツキという者が賢くて人間に友好的な存在だと言っていたでしょう?」
「そ、それは……」
「彼の発言を疑うわけではありませんが……」
「もう! だったらみんなで行きましょうよ!」
この提案に、とうとうダバラさんとケリスさんは顔見合わせ、大きくため息をついた。
「分かりました。それでは万全の準備をいたしますのでお待ちください」
「えぇ、私も支度を整えてくるわ」
エミリー様は軽い足取りで応接室を出ていく。
あとには気まずい空気だけが残った。
「その……すいません。俺が余計なことを言っちゃったせいで」
「あなたのせいではありませんよ、ジャック様」
「心配なのは心配ですが、先ほど言ったようにあなたからの情報を疑っているわけでありませんから。それに……」
「それに?」
「あんなに嬉しそうにはしゃいでいるお嬢様は久しぶりに見た気がします」
これはダバラさんやケリスさんだけでなく、屋敷にいるすべての使用人の共通認識だった。
お嬢様が元気になってくれたのはいいんだけど……ちょっと不安になってきたかな。
※次回から投稿時間が20:00となります!
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