第11話 海釣り初挑戦!

 小屋の中から使えそうな素材を集め、竿とリールとルアーを手作りする。

 あまりにも楽しすぎて時間が経つのも忘れてしまい、気がつくともう昼近くになっていた。


「まずは昼飯の調達と、できたら晩飯用の魚も手に入れたいな」


 生活に慣れるまでは食料を援助してやるとオデルゴさんは言ってくれたが、その言葉に甘えっぱなしというわけにはいかない。一応、明日からは農業もやるつもりではいる――が、今日のところは初挑戦となる海釣りでなんとか結果がほしい。


 海釣りだと夜とか早朝にやるってイメージが強いので、こんな日中に釣れるのかなという不安もある。そもそもこの世界の海でどんな魚が釣れるか分からないし、前世の世界での常識が通用するかも不透明だ。


 まあ、うだうだ考えていても仕方がないので、とにかくまずは第一投目を海に放り込んでみよう。


「よっ――と」


 大きく振りかぶって、広大な青い海へルアーを飛ばす。普通にやっていては釣れるかどうかも分からないので、ルアーには魚を引き寄せるために【魅了】の付与効果をつけてある。

 さて、どんな魚が釣れるかな?

 楽しみにしながらリールを巻いていると、


「うん? なんか重くなった?」


 ボトムを攻めているわけじゃないから根がかりではないはず。試しに合わせてみると、ズシッと重量感が増した。


「来たか!」


 一投目でヒットするとは幸先いいな。

 あとはバラさずに注意をしつつ、こちらへ引き寄せる――って、結構重いな。これなら一緒にタモを作っておくべきだったよ。


「抜き上げられるか、これ……」


 せいぜい十から二十センチくらいの魚がかかればって感じだったけど、この感触だともっとありそうだな。

 なんとか岸の近くまで引き寄せ、あとは力任せに竿を持ち上げた。見た目はなんの変哲もない木製の釣り竿だが、【強化】の付与効果もあって鋼鉄並みになっており、丸々と太った三十センチ超えのサイズでも楽に抜き上げることができた。


「それにしても……これはなんて魚だ?」


 見た目はスズキに似ているけど、色はちょっと青みが強いか。もしかしたらオニカサゴのように毒があるかもしれないので迂闊には触れないな。

 しまったな。

 その辺の対処法を何も考えていなかった。

 どうしたものかと悩んでいたら、


「よぉ、調子はどうだ?」


 まるで狙いすましたかのようなタイミングでオデルゴさんがやってきた。

 早速俺はさっき釣り上げたばかりの魚を見せてみた。

 すると、


「おぉ! こいつはスバーシじゃないか!」

「スバーシ? 食べられるんですか?」

「まあな。切って身をそのまま食ってもいいし、焼いてもうまい。商人たちにも高く売れる高級な魚だ」

「それはありがたい」


 というか、切って身をそのままって……つまり刺身のことか?

生食の文化もあるのは元日本人である俺にとってはありがたいな。他にやっている人がいるってことは衛生管理の状態にもよるけど生で食っても大丈夫ってことだからな。


「ちなみにどんな方法で釣ったんだ?」

「この竿をですね――」


 俺はオデルゴさんに釣り上げるまでの経緯を説明する。

 こうして、異世界でする初めての海釣りは大成功を収めたのだった。



 ――いや!

 あと三匹は釣らなくちゃ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る