第12話 島の学校
結局、夕方までに目標としていた数の魚を釣り上げることができた。
魚は傷むのも早いが、調理の仕方によっては長期保存も可能だ。
とりあえず、釣った魚は血抜きしてエラ、鱗、内臓の処理も済ませた。この辺はオデルゴさんにも協力してもらったのだが、やり方としては俺が持っている前世の知識とそう変わらなかった。魚の構造が似ているからかな?
基本的にこの島では獲った魚をその日のうちに消費する。商人たちとのやりとりで使う魚でさえ、その日のうちに獲れた物が対象となるらしい。
「冷凍庫でもあれば、長期の保存もできるのになぁ」
できれば、村のみんなと共有できる大きな冷蔵庫が欲しい。それくらいなら、俺の付与効果スキルでなんとかなるんじゃないかな。付与効果の中には氷属性に関するものもあるし、こいつを応用すればなんとかなるかも。
「――っと、いけない。それよりもティノを迎えにいかないと」
具体的にいつまでって時間が決められているわけじゃないが、辺りが夕焼けでオレンジ色に染まりだしている時間帯となったら家に帰らないとな。
俺は教えられた場所へ向かう。
そこは普通の家屋より大きめに造られており、子どもたちが手入れをされた庭で元気よく遊んでいた。他にも迎えに来たお母さんたちがいて、何やら談笑中。いわゆるママ友ってヤツなのかな。
挨拶を済ませた直後、俺の姿を発見したティノが駆けてくる。
「ただいま、ジャック!」
「おかえり――って、俺の名前を覚えてくれたか!」
そういえば、ティノに名前を呼ばれるのって初めてだったな。
……はじめて「パパ」と呼ばれた父親のような気分になるよ……まあ、前世も独身だったから本当にそうなのかは断言できないけど、気持ち的にはそれに匹敵するかな。
その後ろからティノを追うようにやってきたのは青い髪の若い女性。俺よりひと回りは若いかな……二十二、三くらいか。
たぶん、あの人が先生かな?
「は、初めまして! 私はこの島の学校の責任者でジェナと言います!」
「ジャック・スティアーズです」
ジェナと名乗った女性教師……美人だなぁというのが真っ先に浮かんだ第一印象だった。
――っと、いかんいかん。
気を取り直して話を聞こうとしたら、
「先生! ティノが言う!」
突然、ティノがジェナの前に立って猛抗議。
その様子を見たジェナは小さく笑った。
「ふふふ、どうやらティノちゃんは直接お父さんに今日のことを報告したいようですね」
「ああ、なるほど……あと、ティノのことなんだが――」
俺はティノとの関係性についてジェナに報告。
彼女自身もティノが人間ではないというのが角や羽を見て感じていたらしい。島の子どもたちはそんなティノを見ても仲間外れにすることなく、ずっと一緒に遊んでいたという。
これについては重要な案件だからと、ティノには内緒でこっそり教えてくれた。
それからジェナにサヨナラと挨拶をして、帰路に就く。
「今日はどうだった?」
「島のみんなと仲良くなったよ!」
「そりゃよかったな」
「うん!」
満面の笑みを見せてくれるティノ。
なんていうか……この幸福感は緋色の
いい島に移住できて本当によかったよ。
明日からも頑張らないとな!
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