第12話 狂暴な太
太「なんや云われっ放しやな。わしを極道みたいに云いないや。叔父さん。葬式の場やさかい、こらえておくけどな」
義男「なんやとぉ……?こらっ、太!おまえ漬物の仕込みもよう覚えんと、店の切り盛りも何もせえへんで……聞けばえろう高い芸子に熱上げてるそうやないか。兄貴が、い、いや、おまえのお父はんが何も云われへんからと云うて……あまり好きさらすなや!」
太「そこまで云うか?なんぼ叔父さんかて、辛抱できへんで。色町通いは漬物を、商品を大量に買うてもらっとるお客はんへのお返しや。接待、営業や。業界のことなんも知らんくせに、出過ぎたこと、云うな!」
義男「き、貴様……」
向井正夫、最前からの廊下の様子を気遣って気弱げに和泉に仲裁を頼む。
正夫(和泉の父、60)「い、和泉、ちょっと見たってくれ。廊下へ出て、仲裁したってくれ」
和泉、母親を父に託して廊下へと出る。義男が太の胸倉を摑んでいる。
和泉「叔父さん!止めて!兄ちゃんも手え離して!順ちゃんの葬式やで。止めてよ!」
和泉、2人の間に割って入ろうとする。
太「(和泉に)おまえは出て来るな。引っ込んどれ!(和泉を左手で突き飛ばしたあと、右手で義男の首を鷲掴みにして)こっち来んかい。離れで話つけたるわい」
義男、太の手を振り払おうとするがビクともしない。片手のままで義男を引きずっていこうとする。息が出来ず苦し気に身をよじらす義男。
和泉「駄目!兄ちゃん、手を離して!(再び間に入って太を引き離そうとするが叶わず、室内に叫ぶ)誰か来て!お父ちゃん、兄ちゃんを止めて!」
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