第11話 太に説教する義男

〇奈良葬儀所内


律子と和泉に声をかける向井義男。

義男(和泉の叔父、55)「律子はん、和泉ちゃん、しっかりな。辛いやろうけど、気ぃしっかり持って。な!?」

律子「義男はん……おおきに。ありがとうございま……(嗚咽で声にならない)」

義男「(何度も肯いて)偉いなあ、和泉ちゃん、あんたも。自分が泣きたいやろうにお母さん支えてあげて。辛いやろうけどここは堪えてや。な?あとで、なんぼでも叔父さんの前で泣かしたる。叔父さんが皆、受けとったるさかい。な?」

義男2人のもとを離れ、傍らにいる向井太に声をかける。

義男「太、ちょっと来い……」

義男と太、廊下へと出て行く。

太(和泉の義理の兄、35)「なんやの、叔父さん。血相変えて」

義男「なんややない!太、おまえ、弟が学校でいじめられとったの気付かんかったんか?なんで自殺するまでほったらかしとった?あ?」

太「そないこと云うてもな、わし、順一とはあまり話せえへんかったしな。喝上げされてたのも何も、それこそ自殺するまで気ぃつかんかったわ。わし、順一とは18も年離れてんのやで。それに……」

義男「それに、なんや?後妻の、継母の子だってか?あほんだら。そない心掛けやさかい順ちゃんも相談できへんかったんや。まったく……ええか、太。おまえはここの、山城屋の跡取りやで。跡取りなら跡取りらしく、もっとシャンとせんかい!えーっ?店の仕事は律子はんや和泉ちゃんに任せっ放しで、おのれは廓通いばかりしとるそうやないか。兄貴もああいう人やさかい、おのれにピシっと云えへんのや。代わりにわしがここで云うたる。順ちゃんの死をきっかけにして、今後は心改めい!わかったか!」

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