第3話 向一登場

勘定を済ませ客2人出て行く。見送る番頭・仲居ら。同旅館内、一階奥の部屋のドアが開く。廊下に出て来る入江向一、その足元。ドアを閉めてロビーへ向かう向一の足元。向かう先に明るいロビーが。向一の目線にそれが近づいてくる。やがて向一に気が付く女将、帳簿から目を上げて向一に笑顔をつくる。


女将「お早うございます」

向一(21)「お早うございます」

女将「明けましておめでとうございます」

向一「(素気なく)あ、どうも……勘定、お願いします」

女将「(軽笑)そうですか。ほな、消費税込みで10800円いただきます」


勘定を済ませて会釈をし無言のまま立ち去る向一。


女将「(向一の背に)おおきに。またお越しくださいませ」

番頭、仲居ら「おおきに。またお越しくださいませ」

向一「あの、大阪駅行のバス停は…?」

番頭「はい、大阪駅ですか。それならすぐそこです。旅館出て右へ100メートルほど行行ったところ。(仲居2人へ)ちょっとご案内して」


向一と仲居2人連れ立って通りへ出る。


仲居A(30代)「(指差しながら)あそこですよ。見えますか?酒屋の看板があるところ」

向一「あ、わかります。どうも」

向一うなずいてそのまま立ち去って行く。

仲居A、仲居B(30代)「おおきに。またお越しください」

仲居A「いやあ、あのお客はん、いい男やわあ」

仲居B「ほんまやなあ。でもなんかボーッとしてはって……(向一の背に)こちら側のバス停でっせ!反対側行ったらあきまへんよ!」

向一やや振り返ってうなずきそのまま去って行く。仲居2人軽く笑って戻って行く。

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