第2話 成駒屋ロビーにて
〇同旅館内ロビー
チェックアウト客数人カウンター前にいる。何人かソファーに腰かけている。玄関内側で番頭が、表で仲居らが客の見送りをしている。カウンター内で客と応対する女将。
女将(50位)「お早うございます。明けましておめでとうございます」
客男A(中年)「(恐縮して)あ、どうも。明けましておめでとうございます」
客男B(中年)「おめでとうございます」
女将「よくお休みになられましたか?」
客男A「はい。もう、ぐっすり」
女将「そうですか。それはよろしゅうおした(愛想笑い)。きょうは?これからどこぞへお参りですか?」
客男A「いやいや、とんでもない。これから新幹線で東京へ帰ります。私らビルの設備関係の者で、こちらへは仕事で来ただけですから。客先に不具合があったら正月でも休めませんよ(笑い)」
女将「まあ、それはそれは。ご苦労様でございます」
客男A「いやいや(笑い)いや、その仕事も昨日で終りまして、本当はせっかくこうして関西まで来たんだから、どこかでこう……羽目をはずしたいんですけどね……」
客男B「ダメダメ。こいつも私も、お互い怖い山の神が家で待ってますもんで」
客男A「それそれ。こちらの言葉で、ほんまに往生しまっせって云うやつですわ(笑い)」
女将「(笑い)そうですか。それなら東京の言葉で(見得を切りながら)行かざなるめーな、ですね」
客男A「あ、うまい」
客男B「よ、成駒屋!」
女将、客男A、客男B「(笑い)」
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