第15話 ゆびきりげんまん
「ダンジョン攻略を引き受けてくれたお礼と言っては何だが、この国で代々受け継がれてきた装飾品を授けよう」
バルバロイ三世はそう言うと、小さな宝箱から一組のイヤリングを取り出した。そのイヤリングは
「綺麗……」
隣にいるカエデが、あまりの美しさに声を漏らした。
「このイヤリングは付けている者に特別な加護を与えるという。ダンジョン攻略の際に役に立ってくれるはずじゃ。受け取ってほしい」
俺は左耳に、カエデは右耳にイヤリングを装備する。恋人みたいで恥ずかしさもあったが、そんな下らない理由で貴重な装備を断る訳にはいかない。案の定カエデにからかわれる。
「なんだか私達、恋人みたいだね」
ニヤニヤしながら言われるが、反応したら思う壺だと無視を決め込む。
「こんなに貴重なものまでありがとうございます。ボスモンスターを倒した
「何か困ったことがあれば遠慮なく頼って欲しい。できる限り協力すると約束しよう」
「ありがとうございます」
バルバロイ三世との会話を終え、俺たちは城を出た。
「ボスの姿だけとは言え情報も手に入ったし、このイヤリングも貰えたし、予想以上の収穫だな」
「そうねえ、ボスはゴブリンとボアが合体してるんだっけ? イヤリングの方はどんな加護があるんだろ?」
ボスについてはある程度想像は着く。おそらく、キングボアの上にゴブリンが
【共鳴の青雫】
スキル:共鳴
・二人で一つずつ装備することで発動する。ダンジョン内に限り、お互いの位置を直感的に把握出来る。
(装飾品にはスキルが付与されているのか?それにしても凄い効果だな)
ダンジョン内の戦闘では、お互いをずっと視認出来ているわけではない。相手の位置を把握出来ていれば、今までよりも高度な連携が可能になる。もしはぐれてしまった場合でも、直ぐに合流に向かうことが可能だ。
「直感的ってどんな感じなんだろうね? 一回ダンジョンで試してみる?」
カエデから提案されたが、バルバロイ三世との
「今日は疲れたし、明日にしようぜ。アリス達にも言える範囲で話しておきたいしな」
「それもそうね、じゃあ早速行きましょうか」
「ダンジョンの中にそんな扉があるの!?知らなかった〜」
アリスは驚いたように言った後、心配そうな顔でじっと見つめてくる。
「どうしたんだ?」
「カズト、無茶してない?すごく疲れた顔してるよ」
「王様と話したから緊張してちょっと疲れてるだけだよ」
「そっか、それなら良いんだけど。絶対に無茶はしないこと、約束よ?」
そう言うとアリスは小指を差し出した。差し出された小指に小指を絡める。
「カエデもよ、小指出して」
ニヤニヤしながら見守っていたカエデにアリスが急かすように言う。カエデは少し驚いた表情をしたが、素直に小指を絡めた。
「「「ゆーびきーりげーんまーんうそついたらはりせんぼんのーます、ゆびきった!」」」
俺とカエデは少し恥ずかしげに、アリスは元気いっぱいそう言うと、腕を広げて俺達を抱きしめた。
「約束、破ったら許さないからね」
念を押すアリスを見て、同じ感情を抱いたのかカエデと目が合うと笑いあった。そして強く抱きしめ返す。
「じゃあそろそろ行くよ、アリス。ミレアさん、クレイブさんお邪魔しました。」
アリスと抱き合った後、夜ご飯をご馳走になり少しゆっくりして別れを告げる。
「明日も来てね! あとカエデ、カズトに変なことしちゃダメよ」
「変なことなんてしないわよ。ね、カズト君?」
「当たり前だろ!」
いつもの流れに半ばやけくそに返事をする。このやり取りが行われているのには理由がある。
俺達はダンジョン攻略の後、アリスの家に少しだけでも寄ることにしていた。その際、話の流れで同じ部屋に泊まっていることがアリスにバレた。アリスの機嫌はとてつもなく悪くなり、小一時間ほど必死になって説明し事なきを得た。ちなみにその間カエデはいつものニヤニヤ顔でただ見ているだけだった。
「なあ、そろそろ別々の部屋に泊まらないか?」
「ダメよ。お金に余裕は出てきたけど、何かあった時のために節約しとかなきゃ」
「それって年頃の男女が同じ部屋に泊まることより大事な事なのか?」
「あれれ〜? カズト君は私の事意識しちゃってるのかな?」
「してるわけないだろ!」
「じゃあ今のままでいいってことね、早く帰りましょ」
またやってしまった。意識したと認めたら何故か負けた気になるのは、
【名前】:カズト
【レベル】:7
【体力】:280/280
【武器】:ロングソード+2
【防具】:旅人シリーズ
【装飾品】:共鳴の青雫(スキル:共鳴)
【筋力】:21
【敏捷】:12
【耐久】:12
【魔力】:5
【割り振り可能ポイント】0
【スキルパレット】チャージスタブ、カウンター
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