第13話 扉の向こう側

 カエデと一緒に案内された部屋に入る。幸か不幸かダブルベッドではなくツインベッドの部屋だった。

 休む前にステータスの割り振りを行う。レベルが1上がったことで、ステータスの割り振りポイントが5ポイント付与されていた。筋力に3、敏捷と耐久に1ずつ振っておく。スキルポイントは1付与されていた。


 カエデもステータスを振り終わったのか、メニュー画面を閉じていた。


「カエデ、先にお風呂入るか?」


 俺は下心など一切なく、心の底からの親切心でカエデに聞いた。なぜかカエデはにやっと笑うと、


「私がお風呂に入った後の残り湯で何かするつもりでしょ? カズト君ってば、やらしいねえ」


「そんなわけないだろ!」


 俺が赤面しながら叫ぶとカエデはお風呂場へ消えていった。その後、聞こえてくるシャワーの音と、無駄に上手な鼻歌にドキドキしながらカエデが出てくるのを待った。


 カエデは可愛らしい薄いピンクのネグリジェ姿で出てきた。少し火照った白い肌や濡れた髪、程よい大きさの双丘は思春期男子には刺激が強すぎる。反応するとからかわれるのは目に見えているため、出来るだけカエデを見ないようにお風呂に向かった。


 風呂から出ると、カエデはベッドの上で寝る準備をしていた。俺もそれにならってベッドに入ると、カエデから呼びかけられる。


「カズト君、今後の予定とかは決まってるの?」


「そうだな、とりあえずダンジョンのマッピングを進めつつ、レベル上げをしていこう。無理しない程度に奥に進んで、マッピング情報とレアな素材を手に入れたら国に報告する。それで王様からの声がかかるのを待つって感じかな」


「王様がボスモンスターの情報を持ってるんだったっけ?」


「アリス達がその可能性があるんじゃないかって言ってたんだ」

 

「そっか。今日行ったところはまだまだ序盤だろうし、頑張らないとだね」


「無理しない程度にゆっくり進めていこう。死んだら元も子もないからな」


「おっけい、じゃあおやすみカズト君」


「おやすみカエデ」


 俺は緊張で眠れないことも覚悟していたが、よっぽど疲れていたのか目をつむるとすぐに睡魔に襲われた。


 

 翌日から、俺とカエデは昼から夜まで、ダンジョン攻略を行った。マッピングを行いつつ、接敵したモンスターは倒して、レベリングも順調に進んでいた。モンスターからのドロップアイテムで武器の強化も行うことが出来た。

 そして、ダンジョン攻略開始から一週間。マッピングの達成率が四十九パーセントを超えたころ、目の前に扉が現れた。



「カズト君、これ何だと思う?」


「何って、扉だろ?」


「そうじゃなくて、何でこんなところに扉があるのかなって」


 少し考える。マッピングの達成率が四十九パーセントということは、半分に到達したということだ。つまり、このダンジョンは前半と後半に分かれていて、この扉の向こうから後半が始まるということなんだろう。誰でも辿り着くであろう結論をカエデに伝える。


「まあそういうことだよね。開ける? 一回帰って準備してから開けてもいいけど」


「うーん、気になるし一回開けてみようぜ。開けるだけ開けて先の景色を確認したら帰ろう」


 そう決めると俺が右扉、カエデが左扉を担当し同時に押し開く。


 扉の先には今までと同じような形状のダンジョンが広がっていた。ただ一つ違う点があり、岩壁の色が今までのような薄茶色ではなく、濃い赤茶色のような色に変化していた。

 そして、扉の少し先二十メートルほどの場所にワイルドボアのようなモンスターがいた。


(ん? あれはワイルドボアか? なんかちょっと大きいし、色が違うような)


 少しの違和感を覚え、目を凝らしてそのモンスターを見てみる。そのモンスターの上部に浮かんだ名前とレベルを見た瞬間、カエデに向けて叫ぶ。


【キングボア:Lv.8】


「カエデ! 扉を閉めろ!」


 カエデはまだ気づいていなかったのか、俺の声に驚いていた様子だったがすぐに扉を閉めてくれた。扉を閉めた瞬間、大きい衝撃音とともに扉が揺れた。何度か衝撃は続いたが、扉が開かないことを悟ったのか扉の向こうの気配が消える。


「ふう、危なかった」


「びっくりしたぁ、あれなんだったの?」


「キングボアって表示されてた。レベルは8だったから前半のモンスターとは比べ物にならないな。おそらくワイルドボアの上位種なんだろう」


「レベル8ってことは今の私たちのレベルより一つ上か。戦闘準備もしてなかったし、回避して正解だったね。助かったわ、ありがとうカズト君」


「どういたしまして」


 この一週間で俺たちのレベルは7まで上がっていた。ダンジョンの前半では最大でもレベル5までのモンスターしか遭遇していない。今までの経験から、自分のレベル以上のモンスターとの戦闘は楽ではないことは分かっていたからこそ、すぐに戦闘を回避できた。


「扉の先の雰囲気も見れたし、モンスターも一匹確認できた。成果としては十分だろう、帰るか」


「そうね、今ので結構疲れちゃったし宿に帰ってゆっくり休みましょ」



【名前】:カズト

【レベル】:7

【体力】:280/280

【武器】:ロングソード+2

【防具】:旅人シリーズ

【筋力】:21

【敏捷】:12

【耐久】:12

【魔力】:5

【割り振り可能ポイント】0

【スキルパレット】チャージスタブ、カウンター

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