第12話 レベリング

 ステータスはこれで良し。次はスキル画面を開く。スキルポイントは1ポイントゲットしていた。アクティブスキル欄を確認し、【剣士専用】をタップする。


(最初に選べるのは一つだけ。その後枝分かれしていって、自分好みのスキル構成にしていく感じか)


【チャージスタブ】

・敵に向かって突進し、剣を突く

必要スキルポイント:1


 【チャージスタブ】をタップし習得する。習得したスキルを【スキルパレット】に登録することで使用可能になるらしい。


(スキルパレットに登録できるのは四つだけか。今後、状況に合わせてスキルを使い分けないといけないな)


 そう考え、【チャージスタブ】を【スキルパレット】に登録し次のスキルを確認する。次のスキルは枝分かれしていて、どちらにするか選択できるようになっていた。


【ダブルスラッシュ】

・上段から剣を振り下ろし、振り下ろした剣を返して斬り上げる二連撃

必要スキルポイント:3


【カウンター】

・敵の攻撃を受け流し、勢いを利用して斬りつける

必要スキルポイント:3


 どっちにするかは迷ったが、どのみち今はスキルポイントが足りないため考えるのは後回しにする。メニュー画面から目を離すとカエデと目が合った。


「終わった?」


「ああ、カエデも終わったのか?」


「かなり前にね。まあじっくり悩む気持ちはわかるけど、女の子を待たせるのは感心しないなぁ」


 軽く謝り、カエデにステータスの割り振りを聞いてみた。カエデは魔力には割り振らずに、筋力より敏捷を多めに振っていく方針らしい。同じビルドじゃないのは対応の幅も広がるし一安心だ。


「よし、じゃあ探索を再開するか。あと一時間ぐらいここら辺でレベリングしようぜ」


「そうだね。時間も時間だし一時間くらいがちょうどいいかも」


 時刻は二十一時を少し回ったところだった。


 その後、あまり入り口から離れないように注意しながらワイルドボアとゴブリンを倒し続けた。覚えたばかりの【チャージスタブ】はレベル1のモンスターであれば一撃で倒すことが出来るほどの威力を持っていた。



一時間後……


「ふうっ、そろそろ一時間だね」


「そうだな、結構疲れてきたし帰るか」


 時刻を確認すると、ちょうど二十二時を回るところだった。成果としてはゴブリンを五体、ワイルドボアを四体倒すことが出来た。ドロップアイテムは【ワイルドボアの肉】が二つ、【ゴブリンの爪】を三つゲットした。


 レベルに関しては上がっていく毎に要求経験値量が多くなっていき、レベルは3までしか上がらなかった。ステータスの割り振りやスキル取得は宿に帰ってからじっくり考えることに決める。




「人のお金で食べるご飯が一番おいしいわね~」


 ダンジョンから帰還した俺たちは、宿を取る前にご飯を食べることにした。昼ご飯と回復薬などのアイテムをカエデにおごってもらった俺は、夜ご飯を奢ることに。


 ただ一つ誤算だったのはカエデの華奢きゃしゃな見た目からは想像できないほどの食事量だ。


「昼はそんなに食べてなかったじゃないか……」


「あの時は自分のお金だったからね、カズト君が奢ってくれるっていうなら目一杯食べないと」


 モンスター撃破で貯めた3000Gは1000Gにまで減ってしまった。カエデに奢ってもらった分は500Gほどだからかなりの大損だ。


(喜んでるカエデの顔も見れたし良しとするか)


 満面の笑みで料理を食べるカエデを横目で見る。かなりの美少女であるカエデと一緒にご飯を食べているという事実をいまさら意識してしまう。


(ダンジョン内ではずっと気を張っていたから大丈夫だったけど、こうして見るとめちゃめちゃ可愛いんだよな)


 緊張のせいか食事をする手が少しぎこちなくなってしまう。


「どうしたの?」


 カエデがこっちを見つめて聞いてくる。


「い、いや、なんでもないよ」


 慌てて言葉を返す。ぎこちないながらもなんとかご飯を食べ終え、宿に向かうことにした。その途中で、初日に行った宿の無礼な店主のことを思い出す。


「カエデは一人でいた時、宿は取ってたのか?」


「もちろん取ってたわよ、それがどうしたの?」


「その宿ってここか?」


 メニュー画面からマップを開き、無礼な店主の宿の位置を指さす。


「そうそう、そこの宿よ」


「この宿の店主ってすごい態度悪いだろ? そういうの気にしないタイプなのか?」


「嘘、私の時は全然そんなことなかったわよ」


 俺の時はたまたまだったのかと思ったが、カエデを見て一つの仮説を立てる。


(あの店主、歳のいったおじさんだったよな。男と女で態度を変える変態オヤジか? カエデと一緒なら態度もマシになるかもしれないな)


「よし、今夜はここの宿にするか」


 そうカエデに言って、宿を目指す。宿に到着し、中に入ると例の変態オヤジが受付にいた。


「宿を取りたいんですが……」


 あえて前回と同じセリフを使う。


「いらっしゃい! お二人さんだね? 部屋は二人用の部屋でいいのかい?」


 俺が一人で来た時とは打って変わって愛想の良い笑顔を浮かべながら言う。心なしか声のトーンもかなり高くなっている気がする。俺は心の中で変態オヤジへの悪口を並び立てた。

 そして『一人用の部屋を一つずつでお願いします。』と言おうとした瞬間、カエデに割り込まれた。


「それでお願いします」


 吹き出しそうになった俺はカエデに小声で抗議する。


「なんでだよ! 二人で同じ部屋ってダメだろ!」


「なんでダメなの? 一人ずつ部屋を取るより値段も安くなるじゃない」


「いや確かにそうだけど……」


 確かに合理的な理由ではあるけど、夜ご飯を食べてる時から変に意識してしまっているんだ。カエデと一緒の部屋だと緊張してまともに寝れない気がしていた。しかし時すでに遅し。カエデの返事を聞いた店主は二人用の部屋の鍵を渡してきた。


「一泊800Gになります。何泊されますか?」


「とりあえず一泊でお願いします」


 当然のようにカエデが答える。俺は諦めて『今夜は緊張で寝れないかもな』と覚悟を決めた。

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