第50話 フィッシュアンドチップス
コルルの、優しい笑顔の指示でみんなサンドイッチを食べ始めた。
「なんだこれは──チーズに何かついてるぞ」
フランソワの国王、ミッテランが一口食べて、ようやく気付いたみたい。気が付いたのは、彼だけじゃなくてみんなだけど。
「それだけじゃないのう。これはわかるぞ、うちでもよくあるからのう」
ご機嫌そうなシチリナ王国の国王様。そりゃそうでしょ、ヒントは──あなたのところの料理なんだから。
「スタンダードなチーズに、これはトマトソースかな?」
「そうです、正解です。さすがですね」
「チーズはワインと一緒によく食べているのでな」
お父様が当ててくれた。その通りだ。工夫したのはサンドイッチの具材。大きなレタスを2枚入れて、その間にチーズや、トマトソースをふんだんに使ったのだ。シチリナ風。他の人もそれに気づいたみたい。
「ふむふむ、チーズにトマトソース。そしてソースがこぼれないように大きいレタスを使っている。よく工夫したな」
「具材の味を殺さずに、うまく生かしているな」
「まさか、ブリタニカで作られる料理がここまでおいしくなるとは──思いもよらなかったぞ」
「まったくだ。最初はどんな味になるかなとひやひやしていたが──これはすごいぞ」
驚いて、キョロキョロと互いに視線を見合わせている。信じられないと言わんばかりだ。
まあ、私もここまでうまくいくとは思わなかった。
そろそろ頃合いね。胸の前で大きく手を叩いて言った。
「じゃあ次行きますね、次」
そして、厨房にいるコルルとヒータのところに行って話しかける。
「次の料理、お願い」
「わかりました。すぐに持ってきますね」
「わかったわ。今行くわ」
私も、一度手を洗ってから最後の調理に取り掛かる。凍らせておいた魚は──すでに2人が解凍してくれた。それに衣をつけて油で揚げて──出来上がったものに特製のたれをつけて出来上がり。
お皿にトマトやレタス──酢漬けにされたキャベツを乗せて出来上がり。
それを、要人たちのところに持っていく。
「出来上がりましたぁ」
「おう、知ってるぞフィッシュアンドチップスだろこれ」
「そうです。さすがはフランソワの国王様です」
まあ、何度かブリタニカに来て食べてるしね。でも、今回はただのフィッシュアンドチップスじゃあないのよね。多分見た目でわかるから。
そして、うちの国王様がそれに気が付いた。フィッシュアンドチップスを不思議そうに眺めていると、こっちに話しかけてくる。
「アスキス」
「お父様、なんでしょう?」
「フィッシュアンドチップスなのはわかった。しかし、そのうえにかかってるものは何だ?」
表向きはただのフィッシュアンドチップスなのだが──しっかりと工夫している。このかかっているタレがそうだ。
「とりあえず皆さん、一口食べてみてください。すぐにわかりますから」
茶色で半透明なタレ──みんな初めて見るものに物珍しさを感じている。エスパーニャ国王は、ちょっと警戒していそう。でも味は大丈夫、だから──一口でもいいから食べて欲しい。
国王様たちは、互いに視線を合わせあうと恐る恐るといった感じでタレのかかった分を食べ始める。
「おおっ、甘辛くておいしいぞ」
「はじめて食べる味じゃ。フィッシュアンドチップスともよくあっていて甘さと辛さがよく効いておる」
「そろそろしえてくれよ。これなんという味付けなんだ?」
どうやら好評みたい。そろそろ教えてあげたほうがいいわね。
「これは、倭京で教わった照り焼きというタレです」
「照り焼き──聞いたことがない味だな」
照り焼き、確か醤油という調味料を基調に甘めの味に仕上げた味が特徴。タレの糖分により食材の表面が艶を帯び、「照り」が出るのが特徴だ。
淀姫や、その側近たちからいろいろと美味しいもののレシピを聞いてきた。その中で人期は興味がわいたのが、この照り焼き。
「色々と料理に合いそうですね。作り方とか教えてくれますか?」
「もちろんでござるよ」
淀姫たちから、しっかりとレシピを教わって。
それを、こっちの人たちの舌に合うように、少しでもおいしくなるように改良していったのだ。甘みや辛みを調整したり──。
3人で、随分と時間がかかっちゃったけど──それをしただけの甲斐はあった。
「照り焼きソース。それから塩少しかけました」
「すばらしい、新鮮な味だ。ぜひ教えてくれ」
「わしもわしも」
客人たちからは大好評だった。味付けとか苦労したし、難しいなって思ったけど、それでも苦労して作った甲斐があった。
中には味が足りないといって塩とかを掛ける人がいたけど、それは人それぞれだしみんなが100点の味は存在しないのだから仕方ない。みんながそれでおいしいって言ってくれるならいいや。
胸が暖かくなり、嬉しい感情になる。
それから、色々なものを用意。
トリュフソースのステーキ。それから──和風テイストのパスタ。クリーム系のソースを使いながら、食べられるキノコを数種類置いた。
「ふむ、キノコとソースがうまいぐらいに絡み合っていてとても素晴らしい味を出している」
「でしょでしょ。弾力のある食感のキノコをうまく使ってみたの」
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